ゲーマー2人と聖域

 昼はファストフードで簡単にとってしまった。休みだからどこに言っても混んでいるし気持ちはわからないでもない。ついでにさっきのアクセも光莉から渡された。

 その後は予定通りモール内にあるゲームセンターへと向かった。ここからは夏樹の独壇場みたいなものだ。

 あたしも音ゲーだけは音楽好きということで夏樹の前でもプレイできる。格ゲーは本気出せないし、あたしそもそもアーケードは苦手だから関係ない。つまり、隠す必要がある場所は限られている。


「とりあえず来たものの3人でやれるもんってあるっけか?」

「私コインゲームとかしかやったことないから、二人がやってるの見てみたかったりするよ!」

「まあ、音ゲーならあたしもよくやるけど……それで楽しいものなの?」

「うんうん!」

「じゃあ、とりあえず音ゲーでもやるか。混んでたらそん時だ」


 夏樹は迷いなくゲームセンターの中を歩いていく。配置換えとかがないかぎりはどこに度のゲームが有るかは覚えてるんだと思う。あたしと光莉もその後に続いて歩いて進んでいく。

 休みだからかコインゲームゾーンは家族連れとかで賑わっていた。コインゲームもよく考えたらあんまりやらないあたしからすると、何で家族だとコインゲームを選ぶのかがわからなかったりする。

 まあ、それはさておいてあたし達が音ゲーゾーンにたどり着くと予想通り混んでいる。だけど2人で隣り合って一つだけプレイできそうなゲームが残っていた。


「あれでいいか?」

「別になんでもいいよ」

「じゃあ、あれにするか」

「私は青葉ちゃんのプレイ画面見てるねー」


 ゲーム用のカードをかざしてから100円を入れてプレイを開始する。普段からヘッドホンとかイヤホンつないでプレイするけど、光莉が見てるし今日はやめておこう。


「でも、これボタン少ないけどどうやってやるの?」


 光莉は最近の音ゲーに触れてないのがわかることを言いながら画面を見てる。


「ここの部分がタッチで反応してるようになってるの」

「へー! なんかスマホアプリとかの音ゲーみたいだね」

「まあ指じゃなくて腕でやるスマホゲーみたいなものでも間違ってはないと思う」


 少し目を横にやるとなんか集中モードに入ってる夏樹が見えた。ただ、あたしと同じ考えなのかイヤホンは持ってるだろうけどつけてない。


「青葉曲選んでいいぞ」

「あたしも別にどれでもいいんだけど」


 といいながらも時間制限はあるから新しい曲が入ってないか確認しながらスライドして選ぶ。


「アニメの曲とかネットで有名な曲とかはわかるんだけど、知らない曲も多いなー」

「多分、このゲームのオリジナル曲とかゲームの歌がない曲だと思う」

「そういうのも入ってるんだ」

「最近はサントラとかでゲーム以上に曲だけ人気出るとかだってあるしね。後は同人系とかね」

「へー!」


 光莉は1つ知るたびにそんな反応をする。すごい純粋な雰囲気で眩しさすら感じる。

 結構あたしって光莉のこと嫌いになってもおかしくないぐらいのことされてる気がするのに、そんな風な気持ちがでてこないのはこういうところなんだろうな。

 純粋にあたしのためを思っているのがわかるっていうか、悪気みたいなのは感じないしやりすぎたと思ったら反省が見える。

 そんなことを思っているうちにゲームが始まった。感覚だけで曲選んで癖で最高難易度選んだけどクリアできるかな。

 あたしの心配は無用だったようで以外とヘッドホンなしでもクリアできた。その後も3曲プレイしてスコア勝負ではあたしが勝利で終わった。


「やっぱ音ゲーだと青葉には勝てん」

「なにいってんの」

「いや、また上手くなってたからな」


 その後も開いてるゲームを見つけてはプレイしていった。途中で光莉もプレイできるコインゲームに移ったら「一番、コインを増やせた人が勝利! 負けた人はジュース一本おごり!」とか言い出したりもした。

 あたしはビンゴが空いていてひたすらそこで運ゲーしてたけど、ぼちぼちにコインは増やすことに成功。夏樹はすっからかんになって光莉が一番稼いでくるという少し予想外な結果になったりした。


 そして気がつけば夕方で電車とかも考えるとそろそろ帰ってもいいかという次官になった頃のことだ。


「よーし、最後にあれやろう!」

「なにするんだ?」

「光莉も知ってるゲームとか?」


 あたしと夏樹がそんな反応をしていると「はあ、わかってないなー」と小さいため息でやれやれとした後に人差し指を立てた。


「プリだよプリデコ!」


 あたし達はその言葉を聞いた瞬間に固まった。基本的にゲームセンターはプレイをするという考えが根付いているあたし達にとってプリデコをとることは聖域に飛び込むことにほかならない。


 プリントデコレーション――通称プリデコだ。簡単に言えばボックス内で写真撮って、それをそのまま外にある画面でデコレーションするとシールになってでてくるものだ。最近じゃデータとしてスマホとかに送ることもできるらしいけど。

 ただそれは要するにかなり仲のいい友達とかカップルで撮るもので、あたしと夏樹は興味がないし、他の友達はあたしの場合ゲームセンターよりライブハウスとかだから縁がない。


「レッツゴー!」


 光莉はそう言うとプリデコのある方向へとずいずい歩いていく。


「青葉……覚悟を決めよう。俺たちもプリデビューの日が来たんだ」

「え? 男友達とかで撮ったことあるんじゃないの?」

「いや俺の友達基本的にゲーセンより家ゲーのネトゲだからな。ゲーセンはソロが多いしプリデコいくようなタイプじゃないっての」

「あたしもにたようなものだから……でもまあ、いこう。光莉行っちゃったし」

「おう」


 あたしも夏樹と同じで覚悟を決めて足を動かしだした。

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