女子の絆
1つ目の店の時点で意気消沈気味のあたしだが、今日は光莉に付き合うという流れは変えられない。結局はやりたいことがある時になにもないと言ったあたしも悪いからね。
ただ、その後もあたしは慣れない雰囲気の店やファッションやアイテムに翻弄されて昼になる頃には精神的体力は0寸前に達していた。
「最後にここ見たらお昼にして、午後はゲームしよう!」
「了解。だそうだぞ青葉」
「うん、聞いてるから大丈夫」
あたしは気合を入れ直す。油断してたら最後のそれにやられかねない。
「ということでとうちゃーく!」
「ここなら俺でも最初から入れそうだな」
「ここ……?」
覚悟を決めていたあたしにとって最後のその店は少し気の抜ける場所だった。
簡単に言えばアクセサリー専門店だ。それにかなり多種多様のジャンルを扱っているみたいで男性客や男子学生なんかもちらほら店の中にいるのが見える。
「いつも最後に私はここを覗いていくんだよねー」
「ふーん……」
「どうかしたか?」
あたしが緊張が溶けて間の抜けた返しをしていると、いきなりのその雰囲気が心配になったのか夏樹が声をかけてくる。
「い、いや、大丈夫。さっきまでほら、ちょっとあたしも緊張する場所の連続だったから」
「そういうことか。まあ、ここは普通に見てくればいいんじゃね? お前が好きそうなアクセとかもあるし。俺は男子向けっつうかそっち系のところ見てくるわ。せっかくだからな」
あたしが大丈夫だと確認すると夏樹はそう言って店の奥に入っていった。
「ほらほら、青葉ちゃんもいこー!」
「うん」
あたしも光莉と共に店の中に入る。
店内でもリボンなどのヘアアクセサリーが多い場所であたしの目についたのは音符のヘアピンだった。
「結構色々ある」
4分音符に8分音符に珍しいト音記号のアクセサリーも売っている。
なんとなく気になったものを手に取って近くにある鏡で確認してみる。
これくらいならあたしでもつけても違和感ないかな。
「あ、青葉ちゃんいたいた。いいの見つかったー?」
あたしが見ているうちに光莉もなにか見つけてきたらしくこちらへときた。
「ま、まあ一応気になるなってのは」
「どれどれ?」
「これなんだけど……」
ヘアピンを見せてみると少し後ろに下がってあたしのことを見る。もしかしてそれでつけてる姿想像できるのかな。
「似合うと思う! ところで、これ見つけたんだけど」
光莉はそう言うと自分が持ってきた物を見せてきた。
「あ、それって」
その手に持っていたのはサファイア色のハートのヘアピンだった。ハートの中には小さいピンクの星が入っている。
「うん。私と青葉ちゃんがあった時に持ってたあのお店の売り切れてたやつ! 私もあの日にお店行ってたからしってたんだよねー」
そういえばそのお店は通路を挟んだ向かい側だった。
「でもそれであたしが欲しかったっていう理由にはならなくない?」
「もちろん! 私も欲しかったなってこともあるから青葉ちゃんこっちで見てたしちょっと行ってきただけだよ。でも、もし青葉ちゃんがあの日欲しくて買えてなかったらって思ったのと……その、せっかくこうやってお出かけにきたわけだし思い出にお揃いのもの欲しいなって思って」
珍しく光莉は少し恥ずかしがってる。人間関係はぐいぐい行くタイプかと思ったけど、臆病なところも少しはあったりするのかな。
「ま、まあそういうことなら……いいけど。ただ、さすがに買ったばっかりのものだし受け取るのは別の場所とかのほうが良いかなって」
「そうだね! お昼の時に改めて渡すね。あ、それとこれはこっちのお店なんだけど、つけてみてほしいな!」
光莉は調子を戻してもうひとつ別のものをだしてくる。それは花やリボンなどはついてないけれど明るい青色をしたカチューシャだ。
「最初のお店でカチューシャ似合いそうって鷲宮くんいってたし、私もそう思ったからちょっとつけてみてほしいなって!」
「これ……つけてたら目立ち過ぎそうじゃない?」
「ゴスロリとかのレベルには達してないから大丈夫だと思うよ?」
「そうなの?」
ファッションに関しては可愛いからといって知っている部分もあったけど、実は髪を伸ばしたこともないからヘアアクセサリーはヘアピンくらいしか買ったこともつけたこともない。
まあでも服に比べたらそれくらいならいいかなと思ってあたしはそのカチューシャを付けてみた。
「ど、どう?」
「青葉ちゃん、帰りに最初のお店のあのコーデ買わない?」
「はあ!?」
「いや、すごい可愛いし似合うと思うの!」
光莉は真剣な顔であたしにそう言ってくる。今回のその顔は今までのニヤニヤとしたような雰囲気もなく真面目に本気で言っているのが伝わってきた。
「……と、とりあえずカチューシャは買ってみるけど。服はもう少し考えさせて」
「わかった! よし、じゃあ買ってこよう! 私も自分用に買うものあるからレジ一緒に行こー!」
「うん」
あたしは光莉がもってきたそれに、ヘアピンもいくつか買うことにして店にあった小さい籠を手に取り中に入れてレジに向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます