初めてと久しぶりなダンジョン攻略
「うおっ!!」
火山の噴火をきっかけにフィールドも少し変形して防戦一方になっている。
他のみんなもそんな状態でかろうじてヘイトを俺が貯めてることでアオが魔法攻撃を当てられている。
「きゃあっ!!」
ただ、火山噴火攻撃が範囲攻撃なせいでどうしてもヒカリさんへのカバーが間に合わない。ヒカリさんは何度か攻撃を食らっていて回復が足りるか不安な頃だ。
「ガルド何かねえのか!」
「ちょっと待て! 今漁ってる」
なぜ戦力外通告のあいつに俺が今声をかけたかというと、アイテムケチってることが多いからだ。さすがにピンチになれば使ってくれるが、問題はあいつが自分のアイテムを整理してないからあったとしても見つけるのに時間がかかる。
「ナツ、ヒカリが!」
アオにそう言われてヒカリさんがいる方向を向くと回復動作にはいっているところに岩が飛んでいっている。拳闘士の防御力は近接攻撃クラスの中では低い部類にはいって、ボスの一撃はシャレにならない。実際一撃食らうごとに回復をしないと危険域にさっきからなっていた。
「俺がどうにかするからアオは攻撃しててくれ!」
「わかった」
俺はヒカリの元へと全速力で走り出す。回復動作に入ると動きがどうしても鈍くなってしまう。それを回避する方法は回復をやめるか味方の誰かがタックルなり押し出すなり引っ張ることで無理やり動かす。
VRだからこそできる要素になっている。ただ、ヒカリさんのHPは回復をやめたら命中すれば倒れてしまう。それなら回復がギリギリ間に合う可能性にかけたほうがいいだろう。
つまり俺は全速力で女子に抱きつくという行為をゲーム内で仕方ないとはいえ人生で初めてすることになった。
「わっ!?」
どうにかヒカリさんを体当たり気味に押し倒して今の一撃は回避できた。
「だ、大丈夫か!?」
「う、うん。大丈夫」
タックルした衝撃とか走ってたせいもあって意識してなかったが、確認する時に相手を見るのは必然。目の前に金髪の少女がいて、しかも押し倒した状態だ。俺の頭は正直真っ白になりかけている。
「おい、イチャイチャは後でしていいから早く起き上がれまたくるぞ!」
「イチャイチャしてねえ!!」
俺はガルドのそんないじり混じりの声でどうにか意識を切り替えて立ち上がり戦闘に戻る。このまま動かないと今度はアオに攻撃がいくから止まってる場合じゃなかった。
「ね、ねえ。ナツくんちょっと」
「どうした?」
「特殊攻撃の後に少しラグがあるから、そこ狙いたいんだけど。ヘイトもう少し貯めて範囲攻撃の狙いもひけないかな?」
「ほほう」
俺は盗賊に慣れてないし、どちらかといえばヒカリさんの立場で戦うことが多い。そして、今のヒカリさんみたいな観察は別の仲間に任せてることがザラだ。
「やってみるけど、できるかわからないから警戒はしておいてくれ」
「了解りょうかーい!」
話が終わって俺とヒカリさんはその場から左右に分かれる。
そのまま先程と同じ挑発攻撃と、しつこめに試してみる。
「そもそも、噴火だから集中させられるタイプの攻撃なのかもわからないんだよな」
「ナツ! ちょっとこっちこい!」
後ろからのその声を聞いて敵の動きに気をつけながら一瞬そちらへ向かうとガルドから小さい玉を投げ渡された。
「なんだこれ!」
「発光玉。あいつ目あるから効くだろ」
「おっけいナイスだ。離れてろ」
「了解した!」
ヘイトを集めるのとは少し違うがこれなら作戦を実行できそうだと俺は思った。
相手のHPもアオが頑張ってくれていて残りは赤ゲージになっている。ヒカリさんとアオの攻撃ラッシュを決められれば倒せる。
俺は噴火攻撃のために雄叫びを上げた瞬間、顔の前に向かって発光玉をぶん投げた。
『グガアァァ……』
目が眩んだことで攻撃が停止して雄叫びをやめたマグマタートル。
「いまあ!!」
そしてヒカリさんが雄々しいとも言える雄叫びを代わりにあげると一番攻撃が通る顔に殴りかかった。
数十秒後、マグマタートルは足の力が抜けてそのまま倒れ込み動かなくなった。
「ギリギリだ……」
自分のMPを確認するとほぼ0に近い。挑発攻撃の消費量は少なくても使いすぎた。
だが、どうにか俺たちはダンジョン攻略を成功することができたのだ。
「疲れたー」
俺はそう叫びながら地面に倒れ込む。最近はレベルが上がってたのと装備厚めをしてたのもあってこういう死闘は久しぶりだった。やっぱりこういう疲れる楽しさは嫌いじゃないな。
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