ボス戦開始
扉を開いた先は地獄を彷彿とさせる活火山の内部のような場所になっていた。そして後ろでゆっくりと扉が閉まると奥にあるマグマ溜まりの中から一匹の亀がでてきた。
『ゴガアアアア!!』
実際の亀の鳴き声を知らない。というか鳴くかどうかも知らないけれど、そんな雄叫びその亀は上げた。
「てか、あれは私触れるの!?」
ヒカリさんはその亀がマグマから完全に出てきたのを見てそう叫んだ。
亀のHPのゲージとともに名前が見えるようになり『マグマタートル』というストレートなモンスターらしい。その名前を象徴するかのごとく甲羅は火山岩のような材質でできていて要所要所が赤く光っている。
ヒカリさんが叫んだのはその熱い場所を拳闘士が殴ったらダメージを受けるんじゃないかという予測からだろう。
「まあ、ひとまずは俺が囮になってみるからヒカリさんは顔とか尻尾とか足狙ってみよう」
「これ、あたしの魔法も相性的にどうなんだろ」
誰がどう見ても火属性の相手モンスターにその疑問は、FCQ初心者ならばよくあることだ。しかし、それは安心していい。
「大丈夫だ。このゲーム同じ属性なら効果抜群でもイマイチでもなく通常で効くから」
「了解」
「ただ、甲羅は硬いかもしれないから狙えそうなら顔とか狙ってみてくれ」
「わかった」
「ガルドはとにかく生きながらやばそうならポーション投げつけてくれ」
「あいよ!!」
やることが決まり次第俺はボスに向かって走り出した。短剣でひとまず挑発効果を入れながら甲羅を攻撃してみる。
予想通りにガキンといい音を鳴らしてHPゲージは動いてくれない。
「ですよねー」
ただ挑発効果は発動するらしく、一応のっそりをこっちを向いてくれた。
「どうすっかなっと」
俺は顔の前に立ちながら相手の攻撃を待つ。動きがわからない以上は回避に専念してみるしかない。ただ、これやってると他の人が顔へは攻撃できないよな。
視界の端でそれを分かってくれてかヒカリさんは敵の後方目掛けて走っているのが見えた。
「おい、ナツ前見ろ前!」
そっちに気がそれているとガルドがそんな声を上げてきて前を向く。するとその太い前足を薙ぎ払うかのように俺にふってきた。
「あぶねっ!?」
ガルドの声と盗賊の速さのおかげで回避できたけど、一撃は重そうだな。ただ、代わりに大きすぎるのと亀の手足の短さもあって回避することは難しくない。むしろ、こうなってくると気をつけるべきは特殊攻撃のたぐいだ。
モンスターによって持っていて、特にボスが持っていることの多い特殊攻撃は基本的に回避しにくいか当たると即死するような物が多い。
俺はそれに気をつけながら足や顔に攻撃してひたすら相手のターゲットになり続けるように立ち回ることにした。多少はダメージ与えられると思ってたけど、これは無理そうだ。
「よいっしょー!!」
甲羅がじゃまで良くは見えないが、後ろではヒカリさんが雄叫びを上げながら攻撃しているし魔法がヒットしてるであろう爆発も見えてる。
ガルドがフィールドの端っこで応援しているのを聞きながら戦うこと10分ほどたっただろう。
相手のHPが半分削れて緑色から黄色へと変化する。
「よし、後少し! って、うわっ!?」
「なにっ!?」
女子2人がそんな反応をしている。一瞬何が起きてるかと思うと、相手の甲羅の岩の隙間からマグマが更に溢れ出てきた。そしてそのてっぺんとも言える場所の岩が突然弾け飛ぶ。
「ガルド気をつけろ!」
「おう! って、あっぶねえ!」
吹き飛んだ岩は落石の如くふってくる。当たり判定もダメージも絶対あるだろうと考えて回避している途中で俺は理解した。
「これ特殊攻撃か!?」
『ゴガアアア!!』
雄叫びを上げる亀の甲羅で起きているそれは紛れもなく火山の噴火だった。
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