ギャップのある幼馴染は好きですか?
Yuyu*/柚ゆっき
第1章 ゲーム好き夏樹とクール系青葉
EP1 鷲宮夏樹の日常と変化
鷲宮夏樹の変わらない日常
5月。桜も完全に散って新しい環境に慣れだす人や、ものすごくだるくなる人がいる――それを5月病というらしい。
かくいう俺も5月病になりましたとかいって休みたい気持ちを必死に抑えずに親に「馬鹿言ってるんじゃないの」と見送られながら学校へと向かう日々が続いている。
まあ5月病はさておき、新しい環境と言えば俺も高校2年となってクラス替えが行われたばかりだ。新たな出会いと別れなんて大それた言葉を使ってみたくはなるが、俺はゲーマーである。友達も大体がゲーマーでオンラインゲームが多いからネットでどうせ絡むのでそこまで劇的なイベントでもない。
教室にたどり着いて自分の席につく頃には「おはよう」なんていって去年からのゲーム友達とか新しいゲーム友達が話しかけてくるしな。
だが妙な縁という物は存在していて、こんな俺が自分から挨拶するような相手がいる。
「よう」
俺が荷物を自分の席に置いてから手を上げつつ軽く挨拶すれば、いつものようにクールな雰囲気で返事がくる。
「おはよう。また目に隈できてるよ」
「いや、実は昨日とあるゲームイベントの最終日でな。そんなつもりはなかったけど1万位以内に入れそうでかなり長くやっちまって」
「ふーん……程々にしておきなよ」
少しツンとした雰囲気な黒髪ショートの髪の女子は
まあ、なぜ俺が話しかけているかと言えば腐れ縁であるからということと朝早くに来る連中の殆どはグループを作っているからだ。そして俺が入っていると言えるゲームグループの奴らはいつも遅刻ギリギリにきていて、青葉に至っては特定グループに属していないといえる。決して仲が悪いわけではないけれど、キャピキャピしたグループでずっといる気はないみたいだ。
なんとなしに俺はイベントの話を真剣に聞く気はない青葉に話したりして朝を過ごす。
だが、これもいつもどおりの日常だ。
たとえば、今こうして俺たちが話している場所からほど近い机にいるキュート系女子グループの会話が聞こえてくる。
「そういえばFCQってゲームしってる?」
「聞いたことある!」
「お兄ちゃんが新しく買ったらしくて古いVRゲーム機の方くれたから始めようかなって思ってて。誰かやってない?」
「あ、私がっつりじゃないけどやってるよ」
なんか普段はファッションの話題とかが多いイメージもあって珍しい話題が出ている気がするけどたまにはこんな日もあるか。
「混ざってくれば? 俺玄人なんだぜって」
「いやいや、まず俺はクラスの女子の名前をほぼ覚えてないからな。話しかける度胸もねえよ」
「そっか……ま、そうだよね」
「そのとおりだ」
まあこんな風にして、現実に宇宙人や超能力者がいたら自分のところへ来るように自己紹介で言う破天荒女子がいるわけもなく。平和で変わらない学校での1日が始まる。
* * *
帰りのHRが終了する。多くの高校生が待ち望んだ瞬間だ。
この後には部活に行くやつもいれば塾に行くやつもいる。そして俺のように即座に帰宅ルートにつくやつもいる――いや、むしろ最近では増えているくらいだろう。
なぜなら、世間一般に衝撃を与えたゲームが半年前からサービスを開始したからだ。
『Fantasy Class Quest』――FCQという愛称をつけられたこのゲームは今や日本中の老若男女を虜にしているVRMMORPGだ。
MMORPGでは基本的にプレイヤーのキャラクターつまりはPCはクラスの個性はあれどそこそこ幅広い事ができるものがメジャーだ
しかし、このFCQはそれらと比べると少しリアルと言うか、言ってしまえば一人ひとりができることが限られたゲームだ。
たとえば剣士を比較してみればメジャーな今までのものはサブクラスなんて言われたり別の武器を装備することで遠距離が可能だったり弱めの回復魔法が使えたりする場合もある。しかし、FCQでは装備できるのは剣やそれに近い武器のみで遠距離の装備には補正などがなく技もないため言ってしまえば極端に性能が下がる。そして魔法は使えず適正武器装備時のみの技しか使えない前衛の戦闘クラスになる。
そのためクラスの種類は豊富であり、さらにMMOではあまり見られない鍛冶師などの生産クラスや商人などといったクラスまでが存在している。
この少し特殊で窮屈ではあるものの協力プレイを実感させるシステムが思いの外高評価を受けて、とあるゲーム実況者のレビューをきっかけに爆発的に人気が広がったのだ。
かく言う俺はサービス開始日からのプレイヤーだけどな。
俺は帰宅してから自室に入り制服から部屋着に着替えてVRゲーム機であるヘッドギアを装着して電源を入れる。そして数秒後にはファンタジー世界の緑広がる草原の大地を踏みしめていた。
「きたか」
ログインが完了して視界がクリアになるとすぐに声をかけてくる1人の商人がいる。
「お前早くね?」
「まあ学校から家近いしな」
頭の上には『ガルド』というキャラクター名とHPゲージが見えている。こいつがもうひとりの俺の腐れ縁であり幼馴染の
「つうわけで今日もよろしく頼むわ」
「わかってるけど、ちゃんと報酬払えよ」
「もちだぜもち! 商人プレイヤーとして依頼は違えねえ!」
こんな風に文句みたいなことを俺も言っているけれど、いつもの光景だ。俺が戦闘可能なクラスをよく使っていてこいつは商人キャラを育て続けている。
FCQが始まってから半年がたった今では当たり前の楽しみ方なのだ。
まあ、今日もいつもと変化は多くなくとも当たり前に楽しくゲームプレイができるんだろうな――そんな風に思いながら装備を整えた俺だったが。次の街にたどり着いた時に、大きな変化が起きるなんて予想できたのはガルドぐらいだった。
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