わたしは人間ですか?

貴乃 翔

無題:

 よく、思うことがある。

 人間にとっては禁忌の話題かもしれないけど。


 ――人間って、何?


『知った』今となっては、こんなことを考えてしまう。

 どこまでなら人間?

 どこからが人外?

 思考能力を持ち合わせている、というのが条件ならば、AIだって同じようなものだ。というか、言っちゃ悪いけれどAIの方が優れている。よって、思考能力があることだけが人間足りうる条件ではない。

 言語を発する、道具を扱う、それはオウムやカラスだってできるだろう。

 ……と、まあ人間だけにできる芸当を探し出そうとすると、絶対に何か似ている生物が存在することに思い至る。

 じゃあ趣向を変えて、それら全ての特徴を併せて兼ね備えているのが人間、というのはどうだろう。

 これは理にかなっているようにも思える。それら全てを持っている個体こそがホモ・サピエンス、つまり人間である、ということなのだから。

 事実的にはそうなるだろう。

 しかし、自信を持ってそう言えるだろうか?

 例えば、植物状態の人間。

 これは人間と言えるのか?

 思考もできない、言語も発せない、道具も扱えない。まさに植物。

 ……とはいえ、誰にそう聞いても、人権の尊重云々を差し引いても、答えは『人間に決まっている』。だろう。わたしだってそう思う。たとえ植物状態で人間としての活動をしてなくても、人間は人間なのだ。

 人間はどうあっても人間。これはわかった。

 なら、『元』人間の場合は?

 例として、死体。死骸。亡骸。

 言い方はともかくとして、生命活動を停止した『元』人間。

 これは果たして人間か。

 もっと言えば火葬され散骨されたあと、存在していたはずの人間は、どうなっている?

 これこそ、二極化すると思われる意見だ。

 肉塊だりタンパク質の集合体だり、ただの元素の集合体、物質だという意見。

 それでもなお人間は人間であるという意見。

 どっちがどっちも、正解なのだろう。

 要は考え方。それ次第で意見は百八十度変わってしまう。

 けれど――人間が、人間でないと言える場合は、あるだろうか。

 少なくとも、人間であるための最低条件はあるはずだ。なんとなく、そう思う。

 それを満たしていれば人間。

 満たしていなければ、人外。

 その最低条件が何か、わたしは知らない。

 けれど問わずにはいられない。


 ――わたしは、人間なのか?


 ◼◼◼◼◼のに。

 なのにも関わらず、人間を名乗れるのだろうか。

 今になっても答えは、出ない。

 こんなことを知っているのはきっと神様だけだ。

 そもそも、神様がいるのかさえわかっていないけど。

 もしいたとしたら、こう投げかけたい。


 ――いったいわたしは、なんなのですか?

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