水晶玉

勝利だギューちゃん

第1話  願いごと

僕がまだ小さい頃、迷子になったことがある。

当時住んでいたところは、絵に描いたようなド田舎。


慣れていないと、迷子になってしまう。

地元の人間ですらそうなのだから、よそから来た人間はなおの事だ。


僕が迷子になったのは、山の中。

縁起でもない話だが、何人もの子供が迷子になり、神隠しにあった。

そのために、その山で対入り禁止になった。


しかし、子供は冒険が好きだ。

僕を含めた何人かで、その山へ入っていった。

しかし、大人の言う事は、時として聞かなくてはならない。

今回もそれを、身を持って知った。


いつの間にか僕は皆とはぐれて、ひとりになってしまった。

強がってはみたものの、やはり幼い子供。

途方に暮れて泣きだしてしまい、ついには歩く体力もなくなった。


遊びのつもりではいったたので、水も食料もない。

そして、涙も枯れはててしまい、1本の木の下に座りこんだ、

「僕は死ぬのか・・・」

死を覚悟した。


その時、一頭の蝶がひらひらと飛んできた。

「不思議な蝶だな」

その蝶は、何かを僕に伝えたいようだ。


本能がそれを、悟った。


僕は立ちあがると、蝶はまるで道案内をするかのように、僕を先導した。

疲れていたので、言葉は出ない。

でも、なぜか足だけは動いた。


別の力が、働いているようだ。


蝶に誘導されてたどりつくと、そこは一面のお花畑だった。

見とれていると、ひとりの女性に声をかけられた。


「いらっしゃい、10人目のお客様ね。

「お姉さんは誰?ここはどこ?」

自然と口が出てのを、覚えている。


「私は、この山の女神。ここは、この山で迷子になった子が辿り着く場所」

辺りを見た。

行方不明になっている子が、何人かいたが、楽しそうだ。


「あなたはどうする?ここで暮らす?何の不自由もないわ。

それとも、下山して元の生活に戻る?辛いことがあるわよ」

どうやら、ここにいる子供たちは、前者を選んだのだろう。


でも、僕は後者を選んだ。

家族を心配させたくなかったのだ。


「わかったわ。ならあなたにこれを渡しておくわ」

僕は女神さまから、水晶玉をもらった。


かなり大きいが、子供でも持てる程の軽さだった。

「この水晶玉を使えば、3回まで願いを叶える事が出来るわ」

「3回まで?」

「でも、それと引き換えに大切な物を失うから、よく考えて使ってね」


気がついたら僕は、家の前にいた。

手には水晶玉があった。


後日、僕の家族は都会へと引っ越した。

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