Chapter11 Voyage to the colorful golden world【色鮮やかで金色に輝く世界への旅立ち】
11-1 Shinkansen【新幹線】
ゴールデンウィークがやって来た。
ジェシーが来て以来、機を見ては、地元から日帰りで行くことが出来る近くの観光地には訪れる機会があったが、せっかく日本に来たのだからと、このゴールデンウィークには東京への旅行をすることにしていた。
というわけで、今日は東京に行くため新幹線のホームまで来たわけだが、まだ新幹線に乗る前からジェシーのテンションは最高潮だった。
「見てみて、譲二! お城が見えますよ!」
その駅の東京行のホームからは、ジェシーが来てすぐの秋に行ったお城を遠くに見ることが出来る。東京に行くならバスや飛行機などの手段もあったが、アメリカから来たジェシーは新幹線に乗ったことがなかったのと、いろいろと楽しめる景観もあるだろうと思って、新幹線で行く事にした。
「お城ならこの前、さんざん見たでしょう?」
ジェシーとあのお城に行ったのは、半年も前のことだが、ついこの間のことのように思える。
「いや、遠くから眺めるお城というのもまた乙なものですよ」
元々偏った部分でジェシーの語彙力はすごいものがあったが、その語彙力はこの数カ月の間にさらに洗練されていた。遠くに眺めるお城のことを乙なものだと表現するジェシーはずいぶん粋な日本人になったものだと思う。
「お城を眺めているのもいいけど、もうすぐ来るよ」
すでに新幹線の指定席のチケットは取っていたが、その出発時間より一本分早く駅には着いた。そこまで余裕を持たせたのは、万が一にも新幹線に乗り遅れないためというのもあったが、もう一つ理由がある。
この駅はのぞみの停車駅であるが、一部ののぞみの通過駅でもある駅で、ホームを超高速で通過する新幹線を見ることができる。その迫力を間近に見れるということでこの駅は、その手の外国人に密かに人気がある。
「おっ、もう来るんですか? ワクワクしますね」
ジェシーも新幹線を見るのは初めてで、当然その時を楽しみにしていた。
お城の方をじーっと見ていたジェシーは、僕の言葉に反応して、すぐさま線路側へと駆け寄ってくる。
「本当に一瞬だから見逃さないようにね」
時速三百キロで走る新幹線はこの長いホームもあっという間に通り過ぎてしまうだろう。ジェシー程ではないにしても、僕も楽しみであった。
「承知しました! 師匠! あと、よければ通過する新幹線の写真をとってくれませんか?」
「うん、いいよ」
僕はジェシーのスマホを借りて、新幹線の来る方角へとカメラを構える。
「危ないから、黄色い線の内側に入っちゃダメだからね」
「もちろん、わかっていますよ」
せっかくだからジェシーのことも一緒に写真を収めようと、黄色い線の際に立つジェシーをフレームの端に入れる。
最高速で駅に入って来た新幹線は、大迫力の轟音と共に駅へと入って来た。
その轟音の元の一つは、車体が空気を切り裂く音であり、辺りに突風が吹き荒れた。
ぶわっ
その強風により、ジェシーの金髪のポニーテールがふわりと揺れて、同時に、短いスカートもふわりとめくれあがる……。
パシャッ
新幹線が通過するその瞬間にシャッターを押そうとしていた僕は、まさにその瞬間を撮ってしまう。
ジェシーの純白のそれは、新幹線などより遥かに僕の心を奪った。
「ふわあああ……。あっという間に通り過ぎていっちゃいましたね!」
新幹線が通り過ぎると、ジェシーが駆け寄ってくる。ジェシーのパンツを見て、僕は心ここにあらずであったが、我に返ると、この写真をジェシーに見られたらまずいことに気付く!
「そ、そうだね……、すごかったね」
ジェシーから見えないようにスマホを操作して、写真を消そうとするが、人のスマホだから、すぐにはそのやり方がわからない!
「どうです? パンツがめくれるシーンはしっかりとれましたか?」
「なんでパンツがめくれるの!? めくれるのはスカートでしょう?」
風でスカートがめくれるというのは一つの鉄板であるが、パンツまでめくれることはない。
「ということは、やっぱり見たんですね?」
ジェシーがじとーっとした目で僕のことを見てくる。
てっきりスカートの言い間違いでパンツと言ったものだと思っていたが、なんとこれは日本人顔負けの誘導尋問だったらしい。
そのことに今更気づいて、僕はすぐに反論ができない。
「やっぱり、パンチラが好きだったんですね……」
力の抜けた僕の腕からスマホを取ったジェシーは写真を確認してしまう……。
「いやいや、ちょっと待ってよ。これは、ジェシーが写真を撮ってくれといったからであって……」
「オレは新幹線の写真を撮ってくれと言ったんですよ?」
「いや、どうせならジェシーも一緒に写そうかなと……」
「ふぅん……、じゃあ、オレのパンツが見たくなかったんですか?」
一体、どう答えたらいいのだろう? 見たかったと答えたら変態扱いで、見たくなかったと言ったらジェシーのことを嫌っているかのようになってしまう。
「いや、それは、だから……」
「駅弁買ってきたよ、さっきの新幹線すごかったね」
僕が答え兼ねていると、愛が三人分の駅弁を持って戻ってきた。
当然、この旅には愛も同行する。まさか中学生である愛を一人家に置いて外泊などできるわけもないから当然である。
「そ、そう。ありがとう! ほら、もうすぐ僕達の新幹線も来るから、指定の車両のところまで行こうか!」
パンツのことをごまかすには好都合だと、僕は話題を変えて、ジェシーと愛を連れて行く。ジェシーも自分のパンツのことを言いふらしたりはしないだろうし、写真もすぐに消されてしまうから大丈夫だろう。
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