Chapter10 TOEGG
10-1 The expanding world【拡張する世界】
TOEGGの受験日は、その時申し込めた最短の日付である3月の初めに決まり、冬休みが終わって両親もアメリカに戻ってからは、よりTOEGG対策を考えるようになる。
ものは試しにと公式問題集を一回解いてみた。その結果新たに気付いた課題としては、TOEGGはとにかく時間に対して問題が多いということだ。
リーディングは75分で100問、リスニングも45分で100問を解かないといけない。それは普段受けている学校の模擬試験とは比べものにならないほどで、高速で英語を処理できないといけない。リスニングも一回しか流してくれないので精度も要求される。
当然ながら全部の問題が英語で書かれており、和訳や英訳という学術的な問題はなく、よりコミュニケーション能力を問うような実践的な問題が多い。
これは最初から分かっていたことではあるが、TOEGGではビジネス分野を中心に、より広範な語彙力も必要だ。
それらの傾向を踏まえたうえで、また、本来の目的であるジェシーと会話ができるようになるという目的も忘れずに、実際のコミュニケーションも相当意識して勉強するようになった。
ある程度基礎力がついて音読を繰り返したことで、英文を読むのに抵抗が無くなってくると、英文解釈が無意識化でもできるようになり、よほど複雑なものでなければ詰まるところなく英文を語順のままに読めるようになる。
TOEGGの公式問題集と模擬試験問題集は何度も繰り返して、5回分のトータル1000問はほぼ100パーセント解けるようにした。最初は自信を持って解けるのは5割程度であったが、何度も何度も解きなおせば、同じ問題なので解けるようになる。
単語帳は相変わらず、忘れて覚えて、文章の中でも覚えるという形を継続して、とくにTOEGGに特化した単語帳を重視して、回す回数を増やすことを意識してやった。
TOEGGには文法の問題もあったので、これは学校指定の問題集をやることにした。これのやり方は単語帳と似たようなやり方で回数を回すことを重視したが、単語よりはもうちょっと踏み込んで理解するように努めた。単語の語源もそうだが、文法もどうしてそうなっているのかという理屈は、長い時の中での偶然の産物としかいえないもので、あまり考えてもしょうがないなと割り切ることにした。それでも、文法は単語よりは体系的に理解できるので、少しは理屈にも気を付けた。
発音の練習の延長で、ジェシーとの日英混合会話レッスンは毎日のように続いており、特にリスニングの応答問題の練習になった。
舞弥からは電子書籍の利用を勧められた。電子書籍のなにがすごいかといったら、洋書の場合、難しい単語の言い換えを同時に表示してくれたり、単語をタップすれば一瞬で辞書が引けたりと第二言語として英語を学ぶ者には垂涎の機能がそろっていることだ。しかも、月額の読み放題プランなら、かなりの種類の洋書が読み放題なのをはじめ、いろんな参考書も読むことができるという。
しかし、僕の英語の予算は尽きていたため、この電子書籍を買うことはできなかった。
代わりに舞弥には図書館を紹介された。図書館には英語学習者用の単語の全訳がついた洋書や、単語帳や会話表現集など英語学習に使える資料が結構そろっている。貸出の期間があるとはいえそれらは全部無料である。僕は、とくに足りないと思う部分の補足や多読の為に図書館の本を使ったのだが、これが思いの他役に立った。
そういうわけで冬の間の僕の英語の勉強量は自分でも驚くほどだが、英語がある程度できるようになると勉強もより進みやすくなるという好循環が産まれたから、それほど苦ではなかった。
そんな中、翔とは勝負の件があるからちょっとした疎遠のようになり、マンガ研究部の活動にも姿を見せなくなっていた。
でも、その翔の存在があったから、僕は絶対に負けないべくさらにやる気を出せたのだ。
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