第83話
第1回エンジェル・トーカー講習会は、ナボタス・シティホールの前にあるジョリービーで開催された。
ドナと佑麻は家の近くの開催ということもあり見学に来ていた。
会場は、近隣に住む大勢の人々で埋め尽くされていて、熱のこもった講習が展開された。やがて講習会も終わりが近づくと、会場の様子を見ながら佑麻が日本語でポツリと言った。
「そろそろかな…」
ドナは、彼の言った日本語の意味がわからなかった。ただ、その言葉によって言いようのない不安感が彼女に生まれ、胸が痛くなった。家へ一緒に帰る道でも、ドナは彼の言葉の真意を確かめることができなかった。
ドナの身辺が急に忙しくなった。ジョンからの依頼で、プロジェクトのシンボルとなって、会社の広報へ協力することになった。開催に向けて大きな力を貸してくれたジョンの依頼は断りきれない。また彼女自身、社会や大企業を動かしたスーパーガールとしてマスコミの注目を集め、多くのメディアに対応しなければならなかった。
さらに、彼女の大学は活動を評価して、将来大学での教授の座の提供を条件に、海外への留学の話しを持ちかけてきた。
地域ではもちろんいつも通り、隣人たちの世話も怠るわけにはいかない。家を空ける時間が増え、家族や佑麻とゆっくり過ごす時間が持てない。先日の佑麻の言葉からくる不安もあいまって、それが彼女に大きな焦燥感を与えていた。
しかし、その日が突然やってきた。
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