第27話~ゼノの正体
宙に浮くゼノは、スッとジェス達の前に降り立った。
「なんで、ここにいるんだよ!」
ディルクがリズを庇う様に立ってゼノに叫んだ。
ジェスも警戒する。
この場所は、ランベールに追い詰められた場所。偶然に来れる場所ではない!
「おや? 警戒されておりますね。何があったのですか?」
「ゼノさん。見つかったのですか!」
「はい!」
またもや空から声がかかり、呼ばれたゼノが声を掛けた者に返事を返した。
ジェス達も目線を上に上げた。
そこには、白を基調とした制服を着た魔術師特殊警ら隊の者がいた!
一般的に警らにあたる者は、中級の者が班長に初級の空を飛べる者と班を組む。
特殊警ら隊は、上級以上が班長で班の者も中級以上で構成されている。
ちょっとしたいざこざなら、一般の警ら隊があたる。
特殊警ら隊は、任務を受けて動く事が多い。
「え? どういう事? 何故彼らがここに?」
「その説明は後で。レネに何かあったのですか?」
ジェスが問うと、逆にゼノが聞いてきた。
特殊警ら隊と一緒に来たのなら敵ではないだろうと、ジェスは頷いた。
「矢で撃たれて、それに毒が塗ってあったらしくて……。イッロさんの所で雇っているランベールと名乗る者が、賊と結託してマジックアイテムを売りさばいていたみたいなんです!」
「そうですか。その者達はどうしました?」
「賊なら洞窟の中で伸びてる。ランベールは逃げた」
ジェスがサラッと説明し、ディルクが顎でクイッと洞窟を示す。
「わかりました。すみません。私は彼らと一緒に病院に向かいます! 洞窟に賊がいるそうなので、お願いします」
「はい! 班長! ……あ、いえ、ゼノさん」
「「班長!?」」
ゼノの命令に警ら隊が返した返事に、ジェスとディルクが驚いて声を揃えた!
「その事も後で。病院に行きますよ」
「はい」
ゼノが飛び立つと、返事を返したジェスがレネをおぶったまま続く。そしてディルクもリズを連れ後を追った。
病院は、街なら必ずある。そこには、一般病棟と魔術病棟がある。
一般病棟は、普通に怪我や病気を医者が治す。
魔術病棟は、治癒が出来る資格を持った魔術師が看護にあたる。治癒の能力を持つ魔術師は少ないので、何でもかんでも魔術病棟で治療は出来ない。
飛んで移動したのですぐに病院に到着する。
ゼノは、三階の入り口に降り立った。ここは、魔術病棟の入り口だ。
「すません。毒の手当てをしていただいても宜しいですか?」
ゼノは水晶を掲げ身分確認をすると、そう看護の者にお願いをした。
「後、ハリラロス村に住む、マティアスクさんに連絡をお願いします」
祖父であるマティアスクにも連絡するように頼む。
ゼノの機敏さに三人は驚いていた。
「さて、少しお話をしましょうか。こちらへ」
レネが治療を受けている隣の部屋を借り、そこにゼノとジェス達は入った。
「あなた達には怪我はありませんね」
聞いてきたゼノに、三人はないと頷く。
「ではまずは、話を聞かせて頂いて宜しいですか?」
ゼノにそう言われ、彼が何者でどうしてそこにいたのか聞きたいが、まずゼノが言う通り、何があったかジェスは説明する事にした。
仕事始めでイッロ宅のマジックアイテムの確認に行くも途中で賊の攻撃に会い、馬車を降り飛んで目的地に向かった為、次の日の朝に到着予定だったが早まったので本人はいなかった。
イッロの雇われ魔術師のランベールが現れて、見届け人の役を引き受けてくれる事になり、ジェスとディルクの二人は別宅で待つように言われるも結界が張ってありおかしいと、レネとリズを探しに向かう。
レネとリズは、街の外れの雑木林へ連れて行かれ、賊に襲われた。そこにジェスとディルクが助けに向かうも、あの洞窟に誘導され、ランベールに襲われる。
ランベールは、魔法陣の実験の為に、そこに誘導したようだった。
その事を知った四人は、洞窟から逃げ出そうとするも毒に侵されたレネが動けなくなり、洞窟に閉じ込められる。
洞窟から出た所にゼノが現れ、ランベールには逃げられたようだった。
と、簡単にジェスが説明をした。
「なるほど。イッロさんが返ってくる前に事を済ませようとしたという事ですね」
「そのようです」
ゼノの言葉に、頷いてジェスは返す。
「で? おたくはどうしてあそこに?」
「もうディルク! おたくはないでしょ!」
「……ゼノさんは、どうして洞窟に来たのですか!」
ディルクは、言葉遣いをリズに咎められ、言い直す。彼は少しむくれた顔をしていた。
それにクスッと笑いながらゼノは答える。
「あなた方が出掛ける時に渡したジェスのムチで魔力を吸収した時は、私がわかるようになっているのです。賊に襲われたと連絡を受け、あなた達だと知りその場所へ向かっている時に、反応があったのでそのまま洞窟まで向かったのです」
「え? なんでそんな事を! あ……」
ジェスは、ゼノの話でムチが取り上げられ、まだ洞窟の中だと思い出した!
「どうしました?」
「ムチを奪われ、洞窟内に捨てられてそのままだった。崩れた岩に埋まっています。すみません」
ジェスは、頭を下げた。
「宜しいですよ。謝らなくても。見つからなければ、また代わりの物をお作りしますので。後で探す様に連絡を入れておきます」
「え? いや、それなら自分で……」
「どうせ検証をするのですからついでです」
「で、どうして来たんだよ」
魔力を吸収するだけじゃなく、その行為が行われた時に、ゼノがわかるようにしてあった。そこまでした理由をディルクは聞いた。
「今回は違ったようですが、リズが魔女の能力を受け継いでいると知る者に狙われる可能性があるからです。四六時中彼女を護衛する訳にもいきませんから。本当はお教えしたかったのですが、何せ時間がなかったものでお伝え出来ませんでした」
三人は顔を見合わせる。
本当に自分達に説明をするつもりがあったか疑問だが、守ってくれようとしていた。
それに魔女の能力を持つ者として、リズが狙われるかもしれないとは三人も思ってもみなかった。
リズの能力は、妖鬼を封印する能力。他にはないと思われる。
だが能力の内容を知らない者からすれば、凄い力を授かった者として映るという事だろう。
「妖鬼を封印する力なのに……」
リズはボソッと言う。
「こればかりは仕方がありません。一部の者しかリズが魔女だとは知らないのですが、どこでどう伝わるかわかりません。ですが我々が動けば、リズが魔女だと触れ回るようなもの。そこで今回は、こういう作戦にしました」
ゼノが更に説明を付け足した。彼が言う通り、特殊警ら隊が動けば注目される。
しかも対象が初級魔術師では目立ち過ぎだ。
助かって安堵するも悩みの種が増えたのだった。
一時間ほどしてマティアスクが病院に掛けつけ、レネは命に別状なく、二、三日入院をする事になった。
「こうなると、自分が村長でなくてよかったと思う……」
ボソッとマティアスクがこぼした。
村長は、余程の事がなければ、何日も村を空けてはいけない事になっている。孫が入院したぐらいでは出来ない。
村長を解任させられたマティアスクだが、別に悔やんではいなかった。
マティアスクに軽く説明した後、ジェス達はゼノに送られて村に戻った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます