第25話~手中の中だった!
レネとリズは、ランベールの後ろについて歩いていた。
マジックアイテムは、倉庫から違う場所へ移されたと言われ、その場所へ案内されている途中だ。
イッロ宅の敷地内から出て、人気がない裏路地を行く。
二人は本当にこんな所にあるのかと、不安になった。
「ねえ、リズ。何かおかしくない?」
「うん。マジックアイテムの保管は、盗まれない様に管理しないといけないよね? 敷地内の方が安全な気がするんだけど……」
二人は変だと話し合う。
保管は、人に見つかりづらいよりは、盗まれない場所にしなければならない。
「この奥になります」
そう言って二人の先を歩いていたランベールは振り返る。
この先は、雑木林だ。
「ここから先は、彼らと行って下さい」
そうにっこり続けたランベールに驚き、レネとリズは振り返る。
そこには、弓を構えた男が一人と胸の前で腕を組んだ男が一人立っていた!
「もしかして、馬車を襲った賊!?」
驚いて漏らしたレネの言葉に、男たちはニヤッとする。
賊とランベールは繋がっていた!
「実は、今日の夜にはイッロ様はお戻りになるのです」
「え……」
リズが呟く。
賊が必要にレネ達を襲ったのは、早くイッロ宅に向かわせる為。その日の内に向かわせる為の誘導で、レネとリズを捕らえる為にこんな事をしたのかと驚く。
レネは焦る。
賊は飛び道具を持っている。空中に逃げても攻撃を仕掛けてこれる!
またランベールは、レネと同じ中級魔術師だ! 実力のほどはわからないが、やすやすと逃げさせてはくれないだろう。
リズも魔術師だが、実践はない!
「私もお金が必要でね。マジックアイテムなんて、とっくに売り払ってないのさ。ので、逃走資金代わりになってもらうよ。女の若い魔術師は高く売れるからね!」
「何ですって!」
ランベールの言葉に、レネは驚きの声を上げた!
レネ達は、ランベールの逃走資金の形に売られたのだ!
レネはリズの手をガシッと掴み、空中へ逃げた!
そして、賊の上を飛んで、街へと逃げようと試みるも、矢が放たれる!
それはレネの左腕をかすめた!
「レネ!」
レネは動きたくても動けなかった!
いつの間にか自分達を取り巻く、足止めの結界が張られていた!
「ゆっくり降りてこい!」
ランベールが、レネに言った。
レネは悔しさに唇を噛む。ランベールの方が上だった!
☆―☆ ☆―☆ ☆―☆
ジェス達は、焦ってレネとリズを探していた。
「ジェス! あれ!」
ディルクが叫び指さした!
その先には、人が浮かんでいる。場所は街の外れだ!
誰かはわからないが、魔術師なのは間違いない!
ジェスとディルクは、急いでそこへ向かう。
浮いていたのは、リズとレネだとわかった!
「リズ!」
そう叫び、ディルクは真っすぐ二人に向かっていく!
「ちょっと待てって!」
ジェスが叫ぶもディルクは聞かない! 仕方なくジェスも一緒に進んだ。
二人の下には、弓を構えた男が見える。そしてランベールの姿もあった!
バシ!!
「俺には結界は効かない!」
近づくディルク達に、ランベールがレネ達に張った結界を仕掛けるも、すぐさまディルクは破壊した!
二人の元に辿り着いたディルクは、レネ達の結界も破壊する!
「大丈夫! リズ!?」
「ありがとう」
「レネ、君、怪我したの?」
「これくらい大丈夫よ」
レネの左腕が血で滲んでいた!
「雑木林の中を逃げよう!」
ジェスはそう提案する。
弓の攻撃を受けない為だ。ある程度逃げれば攻撃してくるのは、後はランベールだけだ!
相手を倒す必要はない。逃げ切れればいい!
四人は頷くと雑木林に逃げ込んだ!
ジェスはポーチからムチを取り出して置く。しんがりを飛び、飛んできた矢を払い落とすつもりだった。
ディルクを先頭にリズ、レネ、ジェスと続く。勿論、道など関係なしに突き進む。
ランベールは、賊にも術を掛け飛びながら追いかけて来た!
賊は弓を打ってくる! それを交わしつつ逃げる。
予想とは違い、賊はガンガン矢を放ってきた。当たりそうなのは、ジェスがムチで払い落とす!
「くそ! しつこいあいつら!」
苛立ったディルクが叫ぶ。
差が開くどころか、縮まりつつある。
ジェスとレネは、おかしいと思っていた。
ジェス達は、森の中を飛ぶ訓練を受けている。これは逃げる為ではなく、追いかける為だ。
差が縮まるという事は、訓練を受けた自分達より上手く飛んでいる事になる。その事から、少なくともこの雑木林を飛び慣れていると推測出来た。
「しまったぁ! 僕は選択を間違えたみたい! 雑木林から出よう!」
ジェスの言葉に、ディルクは上を目指すが、そこに矢が飛んでくる!
――もしかしたら、完全に相手の手中かも!
ディルクがそう思った時、目の前に岩の壁が見えた! そこには大きな穴がある。洞窟だ!
洞窟と気づくと同時に、凄い風圧で四人は飛ばされた!
「うわぁ!」
「きゃー!」
ジェス達は、洞窟の中に吹き飛ばされていた!
「やっぱり……嵌められたのか」
ジェスは呟いた。
矢はほとんど外れていた。ジェスが叩き落としたのは数個だ。あれは誘導する為に打っていた!
その証拠に、上に行こうとした時に邪魔された!
そして、この洞窟に誘導した。
ジェスは左手に明かりを灯し、洞窟内を見渡した。
わざわざ誘導したのだからここに何かあるはずだと思ったのだ。
そして驚く事に、目の前に魔法陣があった!
「これって……」
「ほう。それが見えるのか?」
ジェスが呟くと、ランベールはニヤッとして言った。
「何があるんだ?」
ディルクが問う。
「邪気で描かれたと思う魔法陣……」
ジェスは、青ざめて答えた。
邪気は見えづらい。その為、三人にはその魔法陣が見えていなかった。
――邪気で、魔法陣て描けるものなのか……。
魔法陣は直径五十センチ程。人が一人立てる程の大きさだ。
「この魔法陣は、魔力を邪気に変えて攻撃が出来るんだ!」
それを聞き、ジェスはゾッとする。
邪気になれば、妖鬼が作り上げたトラの様に具現化されなければ、攻撃は三人には見えなくなる!
それよりもジェスにとっては、邪気はおぞましいものだった!
負で作り上げられるモノ。ジェスはそう思っている。
――使わせない!
ジェスは、ランベールに近づきムチを振るった!
突然の行動にランベールも驚き、その右腕にムチは絡みついた!
魔力を吸い取るムチだとゼノが言っていた事をジェスは思い出し、魔力がなくなれば魔法陣を使えないと思い、このムチで吸い取る事にしたのだ!
だがランベールも驚く行動に出た。手を振ったと思ったら賊の二人が吹き飛ばされた!
「「うわー!」」
賊の二人が吹き飛ばされた場所は、ディルク達の足元だった!
ディルクとぶつかりそうになり、慌ててディルクはどける。
「おわぁ。あぶね……」
「どういう事? 私達をこの人達に売る気だったんじゃ……」
ランベールの行動に驚いて、レネは言う。
「そのつもりだったけど、面倒になった。まあお金の方は何とかするさ。私は、実験をしてみたかったんでね」
ランベールは、最初からジェスとディルクを実験体にするつもりだったかもしれない。
そしてランベールは、手を振るった!
ジェスは、ランベールの攻撃に耐えられるかわからないが、慌てて自分の周りに結界を張った!
だが攻撃は、ジェスにではなかった! 奥にいるディルク達にだった!
ランベールが放った攻撃は、皆がいる天井に直撃して、岩が崩れ落ちてくる!
「え! ディルク!!」
ジェスは、振り向き叫ぶも崩れた天井は、無情にもディルク達に降り注ぐ!
そして辺りは砂埃が舞い上がり、洞窟内は何も見えなくなった!!
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