神獣者アルカナタス
ビスケ
第1話:勇者との出会い
何百年振りだろうか……。私の祠に足を踏み入れた者は……。私の前に立つその黒い瞳の人族の女は、ベオウルフと呼ばれる私でさえ目のやり場を失う程の麗人だった。
ベオウルフとはずっと昔、この祠へやってきた人族に付けられた名だ。狼と言われる生物に類似している事からウルフと名付けられ、漆黒の毛色を有しており悪魔の如き赤い瞳をしていたのが由来し、ベオと名付けられた。
しかし、この祠は辺境の地にあり最下層に行くための道中には強力な魔物がいるため、単身で乗り込んできたこの人族の女は只者ではない筈。
『私の名前はエルド。貴方、とても悲しい目をしているわ……。』
黒髪を輝かせ両手差し出しながらゆっくりと私に近づいてきた。私が悲しい目をしている? たわいごとを言うな人族の女!! 私は、私は、私は……。
『ガルルル……。』(近寄るな!!)
『大丈夫……。私は貴方と一緒よ……。』
そう告げると私の長く突き抜けた鼻にそっと手を乗せ徐々に身体全体を使って優しく抱きしめてきた。私は何故か抵抗することが出来なかった。いや、この人族の女の言葉に心の何処かで同調し感化されたのだ!!
『私もかつてそうだった。自分が何者で何処で生まれ育ち何の為に生きているのかも分からない……。』
『ガルル……。』(この女は一体……。)
『ベオウルフって言う汚れた名前じゃなく私が新しく名前を付けてあげる!!』
『ガルルルル……。』(私に名前だと??)
『そうねぇ…………私の苗字を取ってアルカ!!祝福を受けし者の意味からナタス!!アルカナタスって言う名前はどう??』
なんだこの人族の女は!普通の人族ならば私を見ただけで逃げ帰るというものの、あろうかとか私に名前を付けるだと!面白い、少しこの人族の女に興味が湧いてきた……。
『グルルル……。』(その名を受け入れよう!!)
『受け入れてくれてありがとう、アルカナタス!!』
すると、私の突き出た鼻に薄く細い唇でキスをし、自身の額と私の額を合併させ瞳を閉じた。私も同じく瞳を閉じる。いく秒かたった後に人族の女は元いた立ち位置へと戻って行った。
この人族の女は何者なのだ??この者から脇立つ気迫。それに、何かを惹きつけるようなたたずまい。私の言っていることも理解しているようだし。などと考えていると、人族の女は今後の行く先について語りだした。
『私はこれからゆっくり平穏に各地を旅しながら魔物関係の問題を解決していくのだけれども、アルカナタスがいいのであれば一緒に旅をしない?』
私も数百年もの間この祠で過ごし退屈していたところだ!!
『ルルガ……!!』(私も一緒に旅をするとしよう)
『決まりね!!』
この出会が私の運命を変えることになることは今の私はまだ知らなかった!!
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