第39話
コッペイは、二人部屋病室のベッドの上に胡坐をかいて、窓の外の景色を眺めていた。
もうひとつのベッドに寝ていた患者は昨日退院して、今は空になっている。コッペイは静かな病室に居るものの、気持ちはイライラしていた。この病室が嫌でたまらないのだ。ダメージの回復とは言え、病院に居るとあちこち身体をいじられたり、針を刺されたりされそうで、正直怖かった。
もう心臓は大丈夫だと言うのに、なぜ母親は家に連れて帰ろうとしないのか不思議で、事あるごとに母親に当たっている。今も母が差し出したジュースをわざと手で払って、母の服を汚し、母はシミ抜きで病室を離れていた。
コッペイは、窓外を眺めながら、ふと背後にモノの気配を感じた。それはこの世にあるはずもないモノの気配だ。コッペイの背中に殺気にも似た冷気が忍び寄り、彼に緊張を強いた。恐る恐る、そしてゆっくりとコッペイは振り返った。
そして、その化け物と目があった。
「キェーッ!」
耳もつんざくほどの奇声を発して、黒い身体に恐ろしいどくろが踊る。コッペイはその化け物を初めて見たのにもかかわらず、ショッカーだと直感した。
「ショック、ショック、ショック、ショック、」
意味不明な言葉を口走りながらその化け物はコッペイに近づいてきた。
恐ろしさの余りコッペイの身体が硬直しベッドの上で動くことができない。鼓動が速まり、胸が痛くなってきた。
「オマエヲ、ツカマエテ、ドレイニシテヤル。ショック、ショック」
その化け物の目的を知ったコッペイは、大声で母親に助けを呼ぼうと息を吐くが、声にならない。
ショッカーの腕がまさにコッペイのパジャマにかかろうとした瞬間である。
「やめろ、ショッカー。お前の思う通りにはさせないぞ」
ドアに白いヘルメットを被った白バイ隊員が颯爽と立っていた。
振り向いて驚くショッカー。白バイ隊員がゆっくりとメットを脱ぐと、コッペイの顔がパッと明るくなった。そこに居たのはあのヒーロー哲平だったのだ。
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