アリエル姫

那田野狐

第1話卒業式

ファンドゲーム連載中@陽向 舞桜さんのTwitterで「あなたの考える解答は?」という140文字。姫、騎士、忠誠というお題から生まれたお話です


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チュウカナユーラシア大陸の東。海の向こうの弓状列島にワ国日本と呼ばれる国がある。

そのワ国より北。小さな海峡を越えたところにある大きな島北海道に4つのエルフ族によって統治されるエゾ連合王国がある。


始祖とよばれる森林地帯を治め風魔法を得意とするエルフの国。アステ王国。

山岳地帯を治め土魔法を得意とするダークエルフ(山エルフともいう)の国。マヤ王国。

平地を治め火魔法を得意とするヒルエルフ(丘エルフともいう)の国。ナイル王国。

そして島の周辺の海を治め水魔法を得意とするシーエルフ(海エルフともいう)の国。サンゴ王国。


エゾ連合王国はそれぞれの種族の王による合議制で治められている。


ちなみにこの国の神話では、エルフは、森に棲むエルフが山岳に移ってダークエルフ。平地に移ってヒルエルフ。海に移ってシーエルフに進化したのだと言われている。


もっとも、ダークエルフは肌の色は褐色で、シーエルフには首のところに原始的で簡単な鰓のようなものがあるため別種族だといわれる。

また、同じダークエルフでも、肌があおぐろいことから闇エルフと呼ばれる種族や住んでいる地域から水魔法が得意な砂漠エルフと呼ばれる種族もいる。

(※ここでいう砂漠とは保水力のない荒野のことであり暑い訳ではない)


さて、話を本来のモノに戻そう。


今年、エゾ連合王国のナコノレノレ兵学校・・・軍の将校たる士官の養成を目的とした教育機関を異色の人物が首席で卒業した。


サンゴ王国の第八姫、アリエル・シーポープそのひとである。


まず彼女の特徴は、比較的背の高いエルフ族にあっても頭ひとつ飛びぬけた一九〇センチに迫る長身だろうか。

髪の色は明るい栗色。高い位置でポニーテールのように縛っている。

若干タレ目気味である瞳の色は赤。

笹穂状の耳はエルフの印。

兵学校の制服である真っ白な学ラン越しにも判る鍛えられた身体(デザインの関係で胸部装甲の厚みは不明)。

シーエルフの特徴である首の鰓は、兵学校の今年度の卒業生を象徴する真っ赤なスカーフで隠れて見えていない。


「六三四期生、主席アリエル・シーポープ前に」

「はい」

アリエルは兵学校最後の式典の主役として席を立つ。

これから彼女は、ナコノレノレ兵学校の主席卒業生として、エゾ連合王国に忠誠を誓う騎士として叙せられることになる。


アリエルが卒業式の執式者である四人の国王たちの前で片膝をつくと、学校の後輩である4人の学生が足早にやって来て、アリエルの後ろで片膝を付く。


シーエルフでエゾ連合王国の一国であるサンゴ王国のアリエルの実母であるエリス女王がアリエルの前に立つ。


チン


エリス女王は持っていた朱鞘の刀を引き抜いて「彼が、エゾ連合王国に所属するすべての者の剣となりかつ守護者となるように」と、刀に祝別を与え鞘に納める。


つぎに金髪のエルフでエゾ連合王国の一国であるアステ王国のマスカ王がアリエルの前に立ち「彼が、エゾ連合王国に所属するすべての者の足となりかつ守護者となるように」と手に持ったマントと拍車に祝別を与える。


つぎに赤髪のヒルエルフでエゾ連合王国の一国であるナイル王国のクレオ女王がアリエルの前に立ち「彼が、エゾ連合王国に所属するすべての者の導きとなりかつ守護者となるように」と手に持った白地の旗幟に祝別を与える。


アリエルの後ろに控えていた二人の後輩学生が3人の王から刀とマントと拍車を受け取ると恭しくアリエルに装着していく。ちなみに拍車は後ほどアリエルに下賜される半馬半魚の海馬ヒッポカンポスのための馬具だ。


最後に銀髪のダークエルフでエゾ連合王国の一国でありマヤ王国のダマス王、現エゾ連合王国の代表が厳かに

「今日、騎士になろうとする者よ、真理を守るべし、エゾ連合王国のすべてを守護すべし」

と騎士になるアリエルに祝別の言葉を贈る。


アリエルは立ち上がり、ゆっくりと三度刀を引き抜いて、また鞘に収める。


ダマス王はアリエルに歩み寄り、互いに頬にキスいわゆる平和の接吻を与えたると、アリエルの首を素手で打った。

これで六三四期生の兵学校からの卒業と騎士叙勲の儀式は終了である。


なお、アリエル以外の卒業生も後日、自分たちの国に戻って自国の王から正式に騎士叙勲の儀式を受ける。


「アリエル騎士伯よ。騎士としての最初である」

ダマス王が命令すると、二人の学生がアリエルの前に進み出て旗幟を広げる。

更に控えていた二人の後輩学生がアリエルに墨壺と筆を差し出す。


「うむ」

アリエルは旗幟に向かって「疾風迅雷」と大書する。

今後、戦場においてアリエルの指揮する軍には、この旗幟がたなびくことになる。


「「「「六三四期卒業生に祝福を」」」」

四人の王の声と共に会場が歓喜の声に包まれた。

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