第108話ブルネイ②


晩餐会が終わり、男女に別れサロンの様な場所に案内された。




向かう途中、大使に色々聞いてみた。




「大使、ブルネイはイスラム教ですが、やっぱりオークは食べないの?」




「ブルネイではオークどころか、ダンジョンのモンスターは一切食べません。元々肉食の動物や猛禽類は食べませんので」




「せっかくダンジョンで狩っても食べないなんて勿体無い」




サロンに着くと、色々な方が挨拶に来てくれたが、言葉が解らない、お酒は飲めないがタバコが吸えるのが唯一の救いだな。




ど庶民の俺は大使の通訳で、当たり障りの無い返事を返す事が精一杯だった。そんな俺の所に嫌な笑顔を浮かべた男がやって来た。




「お前が日本政府が寄越した奴らしいな」




その男は日本語で話しかけて来た。




「初めまして、大曽根雅也です」




「雅也さん、この方は王族に連なる方で、エネルギー関係の責任者です」




「ところでお前、グリフォンを連れているらしいな」




「どうしても着いて行くと…」




「そんな事は聞いていない、返事だけ返せばいんだ。日本はガスや石油が欲しんだろ、グリフォンをわしに寄越せ。それとお前は生意気にも4人も妻がいるらしいな、4人とも美しいから今晩わしが可愛がってやるから、わしの家に来させろ」




バキッと大理石のテーブルが、雅也によって、真っ二つに割れた。




「大使、これがブルネイのやり方か?」




「こんな事して、ただじゃ」




「ただじゃなんだ、ケンカ売るなら買ってやる、俺は日本政府に頼まれて来たがお前に従うつもりは無い」




「日本との交渉を全部潰しても良いんだな」




「構わない、俺には関係無い、必要ならドラゴンを率いて占領してやる」


(そんな力は無いけどな)




「そんな事で・・」




謁見の時に居た、王太子が間に入った。




「お前は何をしている、すまん日本の方」




王太子も日本語で話していた。




「ふざけるな、グリフォンを寄越せと言われ、更に俺の妻を抱くから今夜寄越せと言われて許せるか!!」




王太子は近くの者を呼び、失礼な男を取り押さえ、部屋から連れ出した。




「大曽根殿大使殿、うちの者が失礼しました、お詫び致します」




「謝罪は受けますが、納得は出来ない俺は帰らせてもらう」




「大曽根さん、今はおさめて貰えないか」




「大使、今は落ち着いて話ができない、今夜は帰る!」




大臣まで来て、俺を引き留めるが、俺は部屋を出て、彼女たちを連れて宿泊先のホテルに帰って行った。




残された、大使と大臣は頭を抱えていた。




俺は彼女たちに今夜有った事を話し、ダンジョンに行かずに日本に帰る事を話した。




彼女たちも話を聞くと憤慨し、帰る事を賛成してくれた。




翌朝、目の下に隈を作った、大使と大臣が訪ねて来た。




「大曽根君、昨夜は嫌な思いをさせてすまなかった」




「別に大臣に謝って貰う必要は有りません」




「では予定通りダンジョン改変はお願いするよ」




「それとこれは関係有りません、俺達は帰ります、ケンカを売られた国に係わる気は有りません」




「それでは村に援助の約束も果たせなくなるが良いのか?」




「構いません、ただし今後俺も政府に対し何もしませんから!」




「ままっ、待ってくれそれは困る」




「知りませんよ、大臣が言い出した事じゃ無いですか?」




「解った、少し待って欲しい、くれぐれも早まった事はしないでくれ」




大臣たちが退室した後、俺は彼女たちに怒られていた。




「雅也さん、クレアさんに本能に流されるなと言われたでしょ」




「俺は理性的だよ」




「雅也は大理石のテーブルを壊したらしいじゃない」




「怒った顔が凄く恐くなったよ」




「ドラゴンに乗っ取られちゃうよ」




「えっ、やっぱり竜核との融合で、俺おかしくなったかな」




「普通の人間だって、力を持てば我が強くなるから、雅也さんは尚更理性的にならないと」




「雅也は怒っちゃダメだよ」




俺達は予定を全てキャンセルして、部屋で彼女とグリフォンたちとでのんびり過ごした。




グリフォンたちをブラッシングして過ごしていると、また大臣たちが訪ねて来た。


今回は王太子まで一緒に訪ねて来た。




部屋に招き入れると、王太子たちは初めて見るグリフォンに驚いたが、王太子は平静を保っていた。しかしゼウスの一言で平静さを失った。




「主を愚弄する者は、我が成敗するから覚悟しろ」




「グリフォンが喋った」




「頭の良いモンスターは言葉を話せるんですよ、あれ王太子大丈夫ですか?」




王太子たちが復活するまで、俺はコーヒーを飲んで待った。




「大曽根さん、すまなかった、国として謝罪する、あやつは自宅で謹慎させ役職も取り上げた、二度と大曽根さんの前に現れる事は無い」




「まあ俺も大人げなかったから、水に流しますよ」




「そうか良かった、もし良ければホテルなら、私は飲めないが酒も出せるから、食事に招待したい」




俺達は王太子の招待で一緒に和やかに夕食を取り親交を深めた。




翌日からダンジョン改変作業に王太子も同行し、家臣たちが止めるのも聞かず、王太子はゼウスに乗り楽しんでいた。




2ヶ所のダンジョン改変が終わり、攻略されていないダンジョンに視察に行った時、ダンジョンの入口で何やら揉め事が起きていた。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る