第95話自衛官来訪
村は今夏真っ盛り。マリアたちは暑さ寒さに強いと言っていたが、一年中気温の変わらないダンジョンから出てこない。
俺は前から皆で準備していた計画を早めた。それはかなりの時間と専門家が居ないとできない仕事だったが、新たな仲間に専門家が居たのでお願いした。
計画は先ず、奥多摩湖の水力発電の稼働、次に地下水を汲み上げるポンプ場の稼働、電気と水道の村へ供給。
一番時間がかかったのが村以外の所への供給閉鎖だ。
水道なんてポンプを動かしても一ヶ所じゃまともに村まで来ない。水道局の図面を見てかなりの数のバルブを締めた。
それでも水道菅は被害を受けていなかったからまだましで、電気は電線が切れたりしているし、変圧器まで壊れていた。
モンスターと戦いながら作業を進めついに稼働にこぎつけた。
稼働しても漏電で火災を起こす事故も起きたりして大変だったらしい。俺は島に行っていて知らなかったが、消防車で消火活動までしたらしい。消防団に居た人も居たが大半が素人なので中々消火できなかったみたいだ。不幸中の幸いで燃えたのは村の建物じゃなかったから良かったものの、今後のために村にも消防団を作ることにした。
そして、リザードマンにも協力してもらい、奥多摩湖の水力発電は稼働した。
リザードマンたちはコントロールまではできないので、水量の管理やゴミの詰まりの掃除などをお願いした。
これで夜にエアコンを動かすことができる。寝苦しい夜ともおさらばだ。
それと同時に予定より遅れたが市民プールを開店することができた。
高校生たちとシルバがプールの清掃を頑張ってくれて、運営管理は高校生たちに任せ、ついに今日オープンを迎えた。
管理班では水着の配布で揉めたらしい。俺が品川の倉庫から大量の水着を持ってきたために、女性たちが狂喜乱舞して、管理班のおばちゃんが切れて大変だったと報告があった。
プールにはほとんどの住民が訪れ、どうしても防衛などで来られない人たちから恨まれたが、俺たちもプールで楽しんできた。
どこに行っても馬鹿は居るもんで、女性たちに点数を付けていた男どもは、女性たちに見つかり子供用プールに沈められていた。
楓ちゃん、いつもと違って胸がある。いったい何枚パッド入れたんだろと考えていたら、楓にお尻をつねられた。大丈夫、俺はちっぱいも嫌いじゃない。
ちなみに今回のライフライン回復は別にプールのためではなく、一番の目的は工場や冷凍倉庫の稼働だ。
今すぐ工場を稼働する必要は無いが、いつか資源回収ができなくなってもいいように準備だけはしていく。
今は農業と防衛に人員を取られ、新たな仕事につける人が居ないし、仕事をしながらダンジョンにも行ってレベルも上げなければいけない。人を増やしたいが人自体が居ない。
リザードマンたちも60人ぐらいしか居ないし、村の労働力としては今のところ当てにはできない。
まだまだ問題がいっぱいあるが未来のためにも、今は頑張るしか無い。
俺は翌日もプールに行きたかったが、ついにダンジョンマスターの自衛官がやってきた。
ヘリから降りてきた自衛官はなんと一人は20代の女性で真っ黒の狼を連れている。もう一人は30代の男性で腕が4本ある熊を2頭連れている。
まさかのモンスター持ちだったとは。とはいえ何度もダンジョンを攻略していればモンスターが仲間になってもおかしくはないしな。
それ以外にも同じ分隊の人と政府から派遣された人など30人がやってきた。
熊を連れた人がリーダーで名前が高梨涼太さん、狼を連れた女性が水嶋涼子さん。
皆さん歴戦の強者なのに、感じが良い人たちで安心した。
俺は暑くてだらけてるうちのマリアたちに会わすために、ダンジョンの中を案内した。
熊は大人しく高梨さんに甘えていたが、狼はグリフォンたちを見つけると威嚇し出した。
俺はグリフォンたちを押さえ、水嶋さんは狼を落ち着かせていた。
そんな所に水浴びを終えたマリアがやってきた。
隊員たちもびびっていたが、狼は尻尾を隠し水嶋さんにへばり付いていた。
熊も狼もまだ子供らしく、まだ狩りに行ったことが無いらしい。
どうやらうちの子たちと年齢が一緒ぐらいで、マリアがちゃんと教育しないとダンジョンに連れていくのは難しいだろうという話になり、ここに居る間にマリアが指導してくれることになった。
熊はマリアにお腹を見せ降伏してからは大人しくなり、子虎たちと仲良くじゃれていた。しかし狼はうちの洗礼を受けることに。グリフォンの子ホルスが揺れる尻尾に噛みついたのだ。
走る狼にぶら下がるホルス、追いかけるレオ、うちではいつもの光景だ。
なんとかホルスを引き離してレオはホルスを叱った。しかしホルスはその場は反省するが反撃されないと絶対にまたする。痛い思いしないと覚えないちょっと残念な子だ。
狼は何度も自分の尻尾を舐めていて水嶋さんが慰めて落ち着かせた。
狼の名前がブラックで熊が大五郎と花子と教えてくれた。
(しかし、ネーミングセンスは……無いな)
俺たちが戻ろうとすると、熊たちは高梨さんに甘えて離れない。ダンジョンに置いていかれると解ると両足にしがみ付き離れない。マリアと高梨さんで宥めやっと落ち着いたのか、子虎たち皆と遊びだした。
狼は毛が長く格好いいが、熊はメチャメチャ可愛い。まだ丸くて真ん丸のお尻に付いた短い尻尾がなんとも言えない。
俺たちは許可を得て撫でさせてもらった。狼はちょっと警戒しているが、熊たちは人なつこく気持ち良さそうに撫でられていた。
明日から熊は人気爆発だなこれは。慣れるまでは柵から出さないようにしないといけないな。
隊員たちには温泉に入ってもらい、夜は紹介を兼ねて歓迎会を開催した。
そこで俺は、いちゃつくカップルが何組か居ることに気が付いた。
奥様たちが言うには、俺たちの結婚式以来カップルが何組かできたらしい。しかしそこにはカップルを怨めしそうに見る集団が。
(解るよ、ちょっと前まで俺もそっちだったからな。でも今は彼女たちと楽しくやってるから、君たちも頑張りなさい)
「雅也さん、なんにニヤニヤしてるの?」
「いや、何でもないよ」
(あぶねー! 顔に出てたか)
村は男の方が少ないんだから頑張れよ。なんかお見合いでも開催するか。しかし男どもは酔っぱらうから嫌われることに気づいてないな。
酔って絡むとセクハラで訴えられるぞ。紳士的にいけば女性たちも羨ましそうに見てるから、今がチャンスなのに。俺も彼女たちが居るから冷静に見れるけど当事者になると見えないもんだな。
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