ネオン街の庭師
ヘルツ博士
ネオン街の庭師
窓から外を眺めると、星空が見えなくなるほどのネオン色に街は包まれていた。西の方に目をやると、色とりどりの薔薇の花が咲いている。あの薔薇は私が作ったものだ。
薔薇の花は美しい。赤や白、黄色の花びらをまとい、茎の棘を隠すその姿に、私は何度ほれぼれしたことだろう。私が花を作り始めた時は、そんな薔薇の花を多く見たものだ。あの日から欠かさず薔薇の花を作り続けている。
しかし、今や薔薇の花は枯れ始めているのだ。東を見れば菫や朝顔、向日葵が見える。鮮やかさこそないものの、近頃はあの花を好む人が多いようだ。もちろん、商売柄私も菫や朝顔を作ることはある。ただ、どこか物足りない。時の流れに遅れていると言われればそれまでかもしれないが、どうも私にあのような花が咲き誇っていることが信じられない。
私の師匠は薔薇の花ではなく、色様々な椿や桜を作っていたらしい。他の花に比べて背の高い椿は、当時の人々を魅了していたのだろう。もちろんそれは昔の話で、私はそのような花を作ったことは一度もない。
人々はいつしか、棘のない単調な花を好むようになっていった。背の高い花よりも小さい花を好み、椿のような木よりも普通の花を好む。
窓から見える風景を目の前に思慮にふけっていた私は、頼まれていた新しい花のことを思い出した。花を作るには、ちょうど花びらになるものを見つけなければならないが、この仕事場にそれがないことにも気づいた。
ネオンと街頭が消えたら、また反物屋の主人に顔を見せるとしよう。
ネオン街の庭師 ヘルツ博士 @Hakase10Hz
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