人間観察日記

聖坂紅

プロローグ

 古くから人間と妖怪と言われるものは共存してきた。しかし二つの存在は光と闇に分かれるようになった。光は人間たちが作り出すもので、闇は妖怪たちがその光の傍で暮らすものだった。だが、だんだんと人間たちの作り出す光が強くなると闇はより暗くなる。その闇に耐えられなくなった妖怪たちは人間に化けて光の中で生きるようになった。それでも、闇の中で暮らし続ける妖怪たちは多くいた。時がたつにつれその妖怪たちの姿は人間たちの目には映らなくなっていった。それでも妖怪たちは人間たちの傍で生きていた。なぜ離れないのか、もしくは離れられないのかそれは妖怪にしかわからない。


 人間たちが農業を始めた頃、土地争いで負けた人たちの悲しみや憎しみなど負の感情がこもった血から生まれた妖怪は日本で初めて誕生した妖怪である。その妖怪たちは生まれながらに力が強く、しばらくして誕生した他の妖怪たちには負けることなどないほど強かった。その中でも三人、特に強い力を持った妖怪たちが下位の妖怪たちを率いて3つの勢力に分かれていった。

 竜のような容姿の竜胆と悪魔の角と蓮の花の色の髪を持った魔蓮、猫耳を持つ猫谷の3人は仲が悪く顔を合わせるたびに喧嘩をしていた。

 そんな中、小さなことから始めた喧嘩が大きな争いに発展し、戦争が始まり今までにないほどの戦争が100年続いた。ちょうど100年が過ぎた頃、魔蓮と猫屋の将軍が殺し合いになりどちらも亡くなった。これにより、多くの戦力を失った。そのことを聞いた竜胆の将軍は2つの勢力に攻め込み、降参させた。そして、魔蓮と猫屋は竜胆と主従の関係となった。それからはほとんどの妖怪たちが竜胆の傘下となり、争いごとはほとんど起こらなくなった。

 これにより、竜胆が最強となり妖怪の世界は平和となった。平和な世界で500年の時が経った頃、戦いを繰り広げていた、魔蓮は魔木蓮という名前で猫屋は猫屋篤として人間に紛れて生きていた。だが、竜胆は人間に紛れることなく、妖怪として、下位の妖怪たちの上に立ち続けてきた。それがやらないわけにはいかない最強としての務めだった。もし竜胆がやらなければまた戦争により、多くの妖怪が死んでしまうのだ。竜胆は最強という名の鎖で繋がれたまま長い時を過ごす。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

人間観察日記 聖坂紅 @horikawaharuki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る