第44話 フェチ
「良かった……。琴姉ちゃんを説得する事が出来て」
迫って来る琴姉ちゃんを何とか回避して、一先ず胸を撫で下ろす。
だけど琴姉ちゃんには、出来る事なら僕の拘束を解いてから部屋を出て欲しかった。
全裸でベッドに縛られながら、一人でアレを大きくしている……って、完全に変態じゃないか。
とにかく、どうにかしてロープから手足を外さなければ。
抜けだすために、バタバタと手足を動かしていると、
「優ちゃん! ようやくミウを寝かしつけたから、早速夜這いに……っ!?」
狐耳を隠して普段着姿になったリナさんが入って来た。
リナさんにロープを外して貰えば僕は自由になるけど、だけど今の僕を見て、そのまま部屋を飛び出しかねない。
「リナさん! こ、これには深い訳がありまして」
「……ごくり」
「へっ!? り、リナさん!?」
あ、あれ? リナさんが部屋を出るどころか、近寄ってきている!?
一目見て状況を理解してくれたのだろうか。流石はリナさんだと言いたい所だけど、さっき喉を鳴らさなかった!?
「リナさん。申し訳無いのですが、助けてくれませんか?」
「……優ちゃん。助けて……欲しいん?」
「え? えぇ。お願いします」
「そ、そっか。お世話になってる優ちゃんのお願いやもんな。仕方ないやんな」
仕方ないって、どういう事だろうか。リナさんが何か言い訳っぽい事を口にしているけれど、普通に助けて欲しいのだが。
リナさんは足から先に外す気なのか、僕のお腹の横へ立つ。
しかし、それにしては足元というより僕の下腹部、というかアレを凝視していない!?
「って、リナさん! どこに手を伸ばしているんですかっ!」
「えっ!? だから、優ちゃんのが大変な事になってるから、ウチが助けてあげようと思って」
「いや、何か盛大に誤解してますよっ! 僕の手足を拘束しているロープを外してくださいって意味ですっ!」
「……えぇー」
どうして、そこで残念そうな顔になるんだよっ!
リナさんが不満そうな表情を浮かべながらも、拘束を解いてくれたけど……僕の心のダメージが大き過ぎる。
せっかく小さな子供へのトラウマが払拭されかけていると言うのに、新たなトラウマが生まれそうだ。
「あ、そうだ。ミウちゃんはもう元に戻りましたよね?」
「え? ううん、未だやで? だから明日香さんへ夜這いしに行こうって、誘いに来てんけど」
ミウちゃんが未だ元に戻っていない!?
明日香との仲が戻ったのにミウちゃんが元に戻らなかった理由は、つい先程まで、僕が琴姉ちゃんと結婚するという未来が生まれてしまっていたからだと思っていた。
それも回避したというのに、未だ元に戻らないのはどうしてだ!? 未だ何か起こり得るというのだろうか。
明日香との仲の回復、琴姉ちゃんとの子作り回避、他は何だ? と考えていると、
「あ、そっか。ごめんな。ミウを寝かしつけてて、うっかり忘れちゃってた。優ちゃんは子作りの練習がしたかってんな」
不意にリナさんが抱きついてきた。
「いえ、違いますって」
「ウチはそれも分かってるって。ちょっと待っててな」
いや、何にも分かってないよね? と、突っ込もうとした所で、突然リナさんの頭に狐耳が生える。
「え? ど、どういう事ですか?」
「ふふっ。血は争えへんなー。優ちゃんも夫と同じく、狐耳の姿が好きなんやろ? 優ちゃん」
気付けば、リナさんのホットパンツから、スラリと伸びる脚に加えて、モフモフの尻尾が生えていた。
ニットのセーターとホットパンツ、それから狐耳と尻尾。有り得ない組み合わせに身を包むリナさんが僕に胸を押しつけてくる。
どうやら僕が狐耳フェチだとバレてしまったらしい。
上目遣いのリナさんが大きな狐耳アピールするように揺らしてみせると、まるで魔法を掛かけられたかのように、僕の目が揺れる耳を追ってしまう。
僕はリナさんが好きなのか、それとも狐耳が好きなのか。いやいや、明日香の事が……
「分かった! これだっ!」
「な、何がなん? 優ちゃん。突然、どうしたん!?」
「ミウちゃんを元に戻す方法が分かりましたっ!」
「ほ、ホンマに!?」
「はい。リナさん、ミウちゃんを本来の姿へ戻すために、元の世界へ帰りましょう!」
僕は自分の心を見詰め、ようやく全てを理解した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます