第22話 新たな関係
「優斗さん。ど、どうぞ」
リナさんが恥ずかしそうに顔を赤らめながら、身体を覆う布団を腰まで降ろす。
柔らかそうなたわわな膨らみが、僕に触られるのを待っているかのように、目の前で揺れる。
何度となく腕や胸に押し付けられてきたから、この胸の柔らかさや弾力は良く知っているけれど、自ら掴んだ事は無い。
手で握れば、きっと僕の指が喰い込み、優しい感触に包みこまれるのだろう。
そんな事を想像していると、ゴクリと無意識に喉が鳴ってしまった。
触りたい。凄く触ってみたい。触っても良いと、リナさんが待っている。だけど、
「リナさん。とりあえず服を着てください。その、川村優太って人について聞きたい事があるので」
僕は目から血の涙を流す勢いで断った。
可愛くて、胸が大きくて、ちょっとドジな所もあるリナさんは凄く魅惑的だけど、それでも僕は明日香の方が好きで、大事な人なんだ。
素直に謝罪しているから責めたりするつもりはないけれど、初めてのキスをリナさんに奪われてしまったので、せめて初めて女性の胸を揉む感動? は、明日香の胸で体験したい。だから断った。
今のままでは、絶対に触らせてもらえそうにないけれど。
一先ず部屋に落ちている服をリナさんへ渡し、背を向けていると、
「あ、あの。一応、着替え終わりました」
声が掛けられたので、再び向き合う。
「それで、聞きたい事って?」
「川村優太っていう人が僕とそっくりだっていう話だけど、川村優介――僕の父親の隠し子だったりしないよね?」
「違うってば。それは絶対に有り得ないから」
「そ、そっか。じゃあ、リナさんはどうしてこの家を知っていた……というか、来た事があるって言っていたの? 僕の両親にも会った事があるんだよね?」
神社でリナさんと初めて会った日、迷う事なく僕の家に歩いて来たし、自ら二年前に来たと言っていた。
だけど、僕じゃなくて川村優太って人が夫で……ダメだ。訳が分からない。
「えっと、この家に来た事があるのは本当。だけど、優斗さんのご両親に会ったっていうのはウチの勘違いやってん。ごめん」
「そっか。勘違いは仕方が無いとしても、どうして僕の家に来た事があるの? この家に川村優太って人は居ないよ?」
「それは、説明出来ない……かな。ホンマにゴメン」
申し訳なさそうに、リナさんが頭を下げる。
説明出来ない……か。だけど、これまで一緒に居て、リナさんに悪意が無いのは分かっている。
納得は出来ないけれど、ここで追求すると、リナさんがまた胸を触らせようとしてくるかもしれない。
……据え膳食わぬは男の恥ということわざもあるし、一回くらい、せめて片方だけなら触っても良いかな?
いやいや、ダメだっ! 危ない。最初から分かっていたけれど、リナさんの身体は破壊力が有り過ぎる。
一度は差し出され自ら断ったものの、今も視界に映る膨らみを前に一人で葛藤していると、突然リナさんが立ち上がり、床へ座った僕に抱きついてきた。
「あの、優斗さん。ウチの勘違いというか、ウチのミスが原因で迷惑を掛けているのに申し訳ないんやけど、お願いがあるねん」
「な、何ですか!?」
「優斗さんがウチの夫ではなかったから、居候させてもらっている事がおかしいっていうのは重々理解してるねん。でも、ウチらが本来の家へ帰るには、あと四日、ううん三日くらい準備が必要やねん。だから、ホンマに申し訳ないんやけど、それまでの間、この家に置いてもらえへんかな」
「準備?」
「うん。その間、家事でも添い寝でも、何でもするからお願い! ウチとミウが今頼れるのは、優斗さんしか居らへんねん」
リナさんの金色の髪の毛から石鹸の香りがして、僕の鼻をくすぐる。
僕の胸にリナさんの顔が埋められているから、心臓がドキドキしている音が聞こえているかもしれな……だから、違うって!
ドキドキは明日香にしろよっ!
頭では分かっているのに身体が反応してしまうのは、男の性という奴なのだろうか。
小さく深呼吸して、リナさんを僕の身体から離す。
「準備が何かは分かりませんが、四日くらいなら別に家に居ても構いません。ですが、家事はともかく添い寝はしなくて良いのと、一つ条件があります」
「条件って?」
「リナさん。僕は、幼馴染みの明日香の事が好きです。でも、その明日香にリナさんからキスされた瞬間を見られてしまいました。その直後、明日香には逃げられてしまっています」
「ごめんなさい。それもウチのせいやもんね」
「過ぎた事は仕方ありません。ですが明日香との仲を戻し、リナさんとの誤解を解く手伝いをして欲しいんです。それが条件です」
思い返せば、明日香に告白しようとした時にミウちゃんが現れ、直後にリナさんに抱きつかれた。
リナさんが何故か僕の家を知っていて、何かある度に抱きついたり、明日香と対立したり。
それから、何が何だか分からないうちに、一方的に勘違いだったと言われて、かなり振り回されたのだから、明日香との仲を取り持つ事に協力してもらうくらい構わないだろう。
かくいう僕も、リナさんの大きな胸を腕に押しつけられて、拒絶出来なかった過失はあるしね。……ただ、おっぱいの弾力を拒否出来る男なんて、そうそう居ないと思うけど。
それに、僕が――
「優斗さん、ありがとうっ! 大丈夫っ! 優斗さんと明日香さんの事はウチだって応援したいし、全力でサポートするわっ!」
自分の思考を纏めている最中に、一度離したリナさんが、再び僕に抱きついてくる。
この過度な密着によって、明日香にいろんな疑惑を持たれたのだけど、リナさんは理解しているのだろうか。
再びリナさんを離そうとした所で、
「そうやっ! どうせやったら、優斗さんの小さな子が苦手っていうのも一緒に克服しよっ! 将来、子供や孫が出来た時に、怖いとか言ってられへんやろ? 我ながら、めっちゃ良いアイディアやわっ!」
上目遣いからの笑顔というコンボを決められ、僕は無言で頷く事した出来なかったのだった。
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