第57話 おつかい

「ねぇ隆、ちょっとお使い頼まれてくれない?」

「あぁ、別にいいけど何買ってくればいいの?」

「ほら、あれよあれ……」

 母さんは買ってきて欲しい物の名前を度忘れしているらしい。

 テーブルの上には、玉ねぎ、人参、豚肉……

「あぁ、わかった!父さんも好きなメから始まる……」

「そうそう。メから始まる品種よ」

 母さんは財布にお金がないからと、家族も使えるクレカを持たせてくれた。


「メークイン、メークイン」と呟きながら急いでいると、ふと小石に躓いた。

「メイン……、メイン……?」

 しまった、思い出せなくなった。


 困っていると、ある店の入り口に貼ってあった値段表が目に飛び込んできた。あぁ、確かこれだ!少し高めだがカード払いだし、まぁいいだろう。

 僕はそれを落とさないように大切に抱き、帰路を急いだ。

「母さんただいま。買ってきたよ!」

「隆、ありが……まぁ!良くわかったわね!」



 母さんはメインクーンを抱き締めた。




※メークインはジャガイモ、メインクーンは猫です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る