第40話 真っ直ぐ

 ばあちゃんは寒がりで、曲がったことが大嫌い。寒い日には、下着に貼れるカイロを貼るのだけど、それをいつも孫の私に手伝わせていた。

 「誰にも見られる場所じゃないんだから、適当に貼ればいいじゃん?」

と私が言えば

「イヤだよ!曲がってるのは気持ちが悪いんだ!」

と言って、必ず私に真っ直ぐ下着に貼らせた。

 そんなだから家の中のものも、いつも真っ直ぐに直していた。机の上も、リビングのリモコンも、冷蔵庫の中の物もいつも整頓されていた。


 そんなばあちゃんが倒れた時、私は低温やけどを心配し、救急車に乗せ運ばれているときに、カイロを剥がしてあげようとした。

そしたらばあちゃんは

「真っ直ぐに剥がすんだよ」と、かすれた声で伝えてきた。

 私は真っ直ぐに丁寧に剥がし、病院へ到着し待ってる間に、トイレの鏡を見て真っ直ぐに自分に貼りつけた。


 ばあちゃんは真っ直ぐに救急医の顔を見て説明を聞き安心すると、やっと眠りにつき、翌朝私が病室へ行くと、真っ直ぐに私の目を見て、

「昨日はありがとうね」と言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る