第29話 睡眠負債
小学生の頃、水泳教室にイヤになるほど通わされた。
母親から
「泳げないとあなたが困るし、将来の旦那様も困るの‼」
という説教を、毎日のようにされてきた。
私は右から左に聞き流していたが、その理由が、結婚して子供が生まれてからやっとわかった。
随分前から日本では、結婚する時に、国が経営する最寄りのジムに夫婦で入会させられるのだが、初めての慣れない子育てで、睡眠不足で意識が朦朧とすると、夫が必ずジムで小一時間泳いで帰ってきた。
そうすると、疲れで夫はいつも以上によく眠るのだが、息子も夜泣きをせずに、私もよく眠れたのだ。
不思議に思って、その理由を夫に聞いてみると、政府発行の結婚の誓約書をよく読まなかったのかと、その箇所を開いて見せてくれた。
『夫婦の睡眠負債は夫婦どちらかのSwimmingで賄うこと』
「だから、最近仕事帰りに、しょっちゅうジムに寄って帰ってきてたんだよ。明日は休みで俺がこの子を見てるから、君が泳いでおいでよ」
次の日、私は久々の一人の時間に、水を得た魚の如く、悠悠と泳いだ──。
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