第9話 満月と共に──。

 そういえばこんな夜だった。

あなたと私が、初めて結ばれたのは。


 少し開けた、窓際のカーテンがひるがえって

 私は涙でにじんだ瞳で満月を見つめて

「こんなにきれいな満月を見たのは初めて」と、

 あなたの胸の中で、そう呟いた。


 その頃と同じ季節の同じ満月なのに、

あなたはもう、ここにはいない。

 あなたはもう、私と共にあの月を見てはくれない。


 大好きなバイクと一緒に、一年前の満月の夜、岬のカーブから海へ落ちていったあなた。


 満月に見惚れ、満月の映った海へ飛びこんでいったあなた。


 あなたは今、満月と共にいるのですか――。

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