ことのは ももの SS作品集!

ことのは もも

第1話 本を飼う

 昨今の流行りは『本を飼う』こと。

 本を深く愛でているとそのうちなついて、本の方から飼い主にすり寄ってきて、自分のことを色々と話してくれるようになるのだ。

 

 僕は両親にプレゼントされた、洋書を飼い始めた。


 最初の頃はコミュニケーションが全く取れず、洋ちゃんが何を求めているのか理解できなかった。しかし、一ヶ月経つ頃には話していることが聞き取れるようになってきた。

 まるで人間の子供が少しずつ話し始めるみたいに、洋ちゃんとの会話は徐々に増えていった。英語はとても苦手だったので、自分でも驚いた。


 洋ちゃんとは3ヶ月経つ頃にはすっかり意志疎通出来るようになり、毎日、凄く嬉しそうに僕にすり寄ってきた。


 そんなある日、とある小説が映画の原作に選ばれた。


 途端にそれを飼い、小説の内容を頭に入れ映画を観に行く人が増えたが、時々、散歩中に、愛想の良い子が通りすがりの人に駆け寄り、あらすじを話してしまうという事案が発生したので、以後小説を飼うのは法律で禁止されてしまった──。

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