不可思議探偵ファイル
浅葱一彦
第1話春日井探偵と事件
人が死なない殺人事件があったら、それはあいつら関わっているかもしれない。
あいつらのことを人々は“不可思議探偵”と呼ぶ。
「くわーぁ」
と大きな口を開けてあくびをしたシンヤ。
「おはよう、やっぱり朝は眠いか?」
声をかけてきたのはヒトシ。
「朝一番で悪いけど、任務来るよ。」
そう言ってきたのはリョウタ。
「流石、リョウタは知るの早いな。」
と上司から渡された書類を持ったショウゴ
「で?今回の任務は?」
とシンヤが聞くと
「現場の方はケイトが適任、かな?」
とショウゴは言った。
「立派な建物だな。」
別荘地で有名な町で一際大きく目立っている別荘を春日井(かすがい)裕(ひろ)信(のぶ)は眺めていた。
チャイムを押し、しばらくするとドアが開き
「お待ちしておりました春日井様どうぞこちらへ。」
と使用人が案内する。
ここに春日井が呼ばれたのには訳がある。春日井は様々な難事件を解決したことで有名な探偵だからだ。
だといって事件を解決しに来たわけではない。この別荘の持ち主である十成修三(と なり しゅうぞう)氏
が今まで春日井が解決した事件のことを聞きたいとのことで呼ばれたのだ。
「(実際に死人が出ている事件をエンターテイメントにするって不謹慎とか思わないのか?)」
と春日井は思ったがこの不景気の時代、大きな事件を解決したからと言って探偵業は儲かる仕事ではない。しかし十成氏は製薬会社の社長で新薬を開発したとかでかなりの金持ちで春日井に多額の契約金を持ってきたため、ただ話すだけなら問題ないかとこの依頼を受けてしまった。
別荘の中も立派で廊下であるというのに赤い絨毯が敷かれている。この絨毯も高価なものだろう。
使用人が部屋のドアをノックし、開けるとそこはまた一段と立派な応接間であった。
「やあよく来てくれた春日井探偵いや、名探偵と呼ばせてもらおうか。」
とやたら恰幅のいい男性が迎え入れた。この男こそ十成修三だ。
「まあこの方があの探偵さん!?」
「この女性は内田さん」
と身なりのいい女性を十成が紹介する。
「しかし驚いたな本当に若いんだな。」
「この男性は原西」
といかにもカツラですといった不自然な髪の男性を十成は紹介した。
「たんまりと面白い話を聞かせてもらおうか。」
「この男性は岡島」
と白髪交じりの男性を十成は紹介した。
「…こんにちは」
「こいつは穂村」
と春日井に興味津々の中普通に挨拶をした他のメンバーより若そうな青年を十成は紹介した。
「ここに集まった皆さん、主役もそろったことですので名探偵の話を聞こうじゃないか。」
と意気揚々と十成は言った。
「失礼します。旦那様。お茶を用意いたしました。」
と春日井を案内した使用人とはまた違う使用人がお茶を皆に配った。
「えっと何の話をしましょうか…。」
と春日井が話そうとすると
「う、ごほごほ」
バタン
とお茶を飲んだ十成が倒れた。
「キャー」
「十成が倒れた。」
応接間は騒然とした。
「皆さん落ち着いてください。別の部屋に行きましょう。これは事件なので警察を呼びましょう。あとここの物は触れないでください。現場保存は基本ですから。」
と春日井は使用人に別室を用意してもらい十成以外をその別室に誘導した。
そして警察がやってきて。現場検証が始まった。
「ということは使用人以外、客人と十成氏はそのお茶を飲まれたのですね。」
と警察が聞き込みをする。
「十成氏に持病とかは?」
「いいえ、旦那様は健康には気を付けていらっしゃったので定期的に健康診断に行っても至って健康という結果が出ています。かかりつけの病院にも連絡していただければすぐわかります。」
とお茶を配った使用人が説明した。すると春日井は
「簡単に言えば毒殺。使用人が配ったお茶で、ということか。」
と言った。その一言で周りはざわつく。
「私たちも同じお茶を飲んだんだぞ。」
と原西が叫ぶ
「この中で誰が死んでもおかしくない、無差別殺人と言うことか!?」
と岡島が疑問に思う。
「いえ、確実に十成氏を狙っての犯行でしょう。」
春日井は断言した。
「ならお茶を淹れた使用人が犯人!?」
と内田が言った。
「私は毒は入れていません。」
とお茶を淹れた使用人が言った。
「でしょうね、真っ先に容疑者となりやす過ぎますから。」
と春日井は言った。
「探偵さんは誰が犯人かわかっているのかい?」
と内田は春日井に問う。
「ええ、その前にお茶の配り方は決まってらっしゃるのですか?」
と春日井の方がお茶を淹れた使用人に聞いた。
「いえ、でも私流の者の置き方とか配り方とかはあります。」
とお茶を淹れた使用人は言った。
「その配り方を知っていた人が犯人。」
春日井は力強く言った。
「僕を案内してくれたもう一人の使用人が犯人です。」
「話し中すみません。薬包紙が見つかりました。」
と鑑識が話してきた。
「やっぱりこうなる気がしたのよ。」
と春日井を案内した使用人は言いながら薬の入った薬包紙を出す。
「私の父は十成の製薬会社で新薬を開発していた。新薬ができたその途端父は過労で亡くなった。表面上ではね、本当は、十成は新薬の調合を外部に漏らさないために私の父を殺したのよ。」
また周りがどよめきだすと案内した使用人は持っていた薬の包装紙開ける。
「もう人生に悔いないわ。」
と薬を飲もうとする。
「やめろ!!!」
と春日井や警察が止めようとする。
「それ飲んでも死なないよ。」
一同を驚かせる発言をしたのは穂村。
「それ整腸剤」
と穂村は言った。
「整腸剤だって!!?」
一同は穂村の方を向く
「十成氏の製薬会社について調べてたんですよ。従業員の中に明らかにおかしい点が見つかってその従業員についてさらに調べていくと十成氏の使用人に関係者がいるとわかって。家に来たらその人が怪しげな薬を持ってたから整腸剤とすり替えておいて、十成氏にお茶を飲んだら死んだふりをするよう頼んだんです。」
一同が唖然としてる中、
「あ、これ使用人さんが持ってた薬です。」
と透明なチャック付きの袋に薬包紙に包まれた白い粉が2つ入ったものを穂村は鑑識に渡した。
「ああ、あと十成氏は新薬で儲けたように見せかけて脱法薬で儲けていたため、そちらの方で逮捕ってことです。」
けろっとした顔で穂村は言ったが十成氏を殺害しようとした使用人を含めて一同言葉が出なかった。
「以上が報告となります。」
と十成殺人未遂事件の後、穂村ケイトは上司に報告した。
「ケイトお疲れ!」
とリョウタが言った。
「いやリョウタがあの日に事件が来るって予知していたおかげだよ。」
とケイトは言った。
「でも色々現場での説明は面倒だったんじゃないか?」
とシンヤが言った。
「シンヤの過去視であらかたわかっていたからあとは警察の方が動いてくれたよ。」
とケイトが言った。
「薬のありかを千里眼で見ててよかったろ。」
とヒトシ。
「ああ、おかげで簡単にすり替えられたよ。」
とケイトは言った。
「触らずに移動させることができるのはケイトの特技だからね。」
とショウゴが言った。
「ショウゴは今回出番なかったな。」
とヒトシがからかう。
「それをいうなら春日井とか言う探偵が一番役目奪われたんじゃないのか?」
とリョウタが言った。
「春日井探偵。またどっかで会うだろうか。」
とケイトは遠くを見た。
不可思議探偵。それは科学では証明できない能力で事件を未然に防ぐ探偵。彼らはどこかで活躍している。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます