第二十六話 井戸の中の蛙だったのか? いつの間にか巻き込まれていた。
……前回から引き続き、お話は
ここで念のため、
時間軸に混乱が生じないように付け加えるが、昭和の六十一年。
西暦では一九八六年で、舞台は私立
高等部二年生になったのなら「進路進路」と、この頃から大騒ぎになるものだが、まだネズミのいじめが続いているのだから、……まったく呆れる。
中途半端に平和だから、持て余しているのか?
ったく、それが原因だと気付かず、性懲りもなくまた、
他の奴は勧誘しない。
あくまで俺にだけだ。
勧誘のお言葉は左の条々(webなら
「今の学園には情報屋が必要なの」
「君の力が必要なの」で、
「正義が必要なのよ」と、いう具合に『必要事項三段攻め』だ。
梅雨はまだだけど、本当に
某時代劇の役になりきっているのか、……キャラが暗い。アイドル系のその顔には不似合いだ。おまけに棒読み。まだまだあるけど、
もっとオリジナルに、もっと
「情報屋とは何ぞや」と声を上げる以前に興味なし。スルーだ。
――しかしな、それを決め込むにも限界があるぞ。
と、そんな思いからか、
「……まあ、情報屋に報酬があるっていうのなら、話にも乗るがな」という感じでハッキリ声に、言葉に変わって出てしまった。その結果、俺は「アワワワ」と慌てる。
それとは対照的に、彼女の
昭和五十九年に最後の
勧誘から始まり三か月という期間、
本当に短かった。『
美津子が、情報屋を辞めた。
……理由がなくなったのだ。時流が、いつの間にか問題を解決していたのだ。ネズミは
本当は嬉しいはずだった。
俺ではなくて、美津子が……。でも、暗雲漂う表情をしていた。
俺は傍観者。これからもそうだ。
正義の味方が嫌いだ。クソくらえだ。
それでもな、興味を持てるものは金。美津子の言葉を当てはめるなら、
「今の家に必要なものは金」「収入が必要だ」……と、いうことになる。
学園から徒歩五分に位置するアパート。そこが
前に居たルームシェアの場所から、そんなに離れていない同じ千里の町。でも、俺にとっては
そんな毎日。もう住む世界が違うのかさえ思っていた。
今は母、
母親、お母さん、母さん。……一番の後者だ。『川合』という名字で、俺は母さんと一緒に暮らしていた。川合という以外、他の名字を知らないから。アパートは古い。階段の
お袋、それは卒業後もっと後で……やはり母さん。
生活保護は受けられずで、
日々、お弁当屋さんのパートに勤めていた。俺もアルバイトを考えていたが、やはり校則では禁止。それでも校則の網を潜って夜間、スタンドのあんちゃんを演じた。
情報屋は一度も稼業にならずに消滅した。
美津子は人形のように動かない。以前の彼女はもういないのだ。再開の
情報屋は、美津子だけではなかったのだ。
つまり情報屋は、俺たちだけではなかったのだ。それも大きな組織で『情報屋稼業』として
――待てよ?
なぜ狙われる? なぜターゲット?
その二つの疑問から、まるで連鎖反応を起こしたように次々と、俺の脳内で疑問が巻き起こってくる。パチンコならフィーバーだ! そもそも情報を提供するところまでが『情報屋』の役目ではないのだろうか? 武器やアクションは必要ないと思うのだけど、この学園の『情報屋』は、意味を取り間違えているようだ。
なら、情報には情報?
と、いうわけでもないけど、
けったいな話だが、その情報……『俺が情報屋に狙われている』ことを教えてくれたのは、この学園の『
『この学園にはね、大きく三つの情報屋稼業が存在する。
――と、何ということだろうか。
昼休み早々この人込みを駆け抜けて、まるでヘッドホンでもしているかのように、直接脳に語りかけてくる。雑音の中にも拘らず存在感満載で、淡々とした中年女性の声が聞こえる。……また忍者の如く、周りの奴らには聞こえない仕掛けのようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます