14
それは星砂に近い出来栄えではあるが、色が青ではなく緑色っぽく色が変化している。俺の爆発物で真っ黒こげよりかは遥かに上である。
しかし、負けず嫌いの時坂は相当悔しがっているようだ。
「……なんで緑色になるのかしら?」
時坂が深々と考え込みながら悩んでいる。
その様子を俺は横から窺っていた。本当にどうして色が変わったのか俺にも疑問だ。
あそこまで完璧にこなしていたのに手放した後に失敗するとは、俺も時坂も思ってもいなかったはずだ。
隣で長塚が星砂の作り方を手伝っていたのにこうなってしまったのだ。
だが、細かい数字の微量でも見逃さないほど繊細な手慣れで失敗するはずがない。手順も完璧。そうなると、原因は時坂自身にとなる。
そして、その原因を掴んだ様子を見せる長塚はハッと顔を上げる。
「そういう事だったんだ……」
と、自分だけ納得している。早く、それを教えろよ。
「何自分だけ納得しているんだよ。それで、時坂のどこに問題があったんだ?」
「あ、それはたぶん。彼女の魔力を計算に入れてなかったんだよ。そこが仇となったの」
今までの違和感を解消したかのような吹っ切れた表情をして、バサッと言った。
時坂の力と長塚の力を一緒にしていたようでそれをカバーすることを彼女は忘れていたようだ。
なぜ、彼女がそうなってしまったのか、俺が思うに時坂と長塚は魔力の力が同等に近い存在なのだろう。
「あと少し力と原料を押さえるべきだった……」
長塚は落ち込み、後悔している。
そして、その目の前にいる時坂もまた、頭を抱えていた。
「つまり長塚は自分の設計したのを時坂にやらせてしまったんだろ? なんで、それがいけないんだ?」
「はぁ?」
長塚はなぜか俺を睨みつける。言いたいことは分かるよ。分かるけどさ……。
「だって、あそこまでうまくいったんだろ?」
「そうだよ。だから駄目だったんだよ」
「いや、お前は分かっていないな」
「なんで? 分かっているからこうして落ち込んでいるんだよ。桐谷君、魔女を怒らせると後悔するよ」
「………………」
長塚の声は少し恐ろしくて、棘の刺さった口調になっていき、俺の耳は痛い。はっきりとは聞こえるが、すぐに耳を塞ぎそうになる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます