7
長塚はそのまま家に入ると、そこはまた違う世界だった。家に入ったと思えばそこは外の世界というより森の中だった。そして、目の前に彼女の家らしき一軒家が建っていた。
どうやら本当だったらしい。俺達は長塚の魔法で『テレポート』、つまり瞬間移動してこの家に来たのだ。
そして、俺達は彼女の部屋に至る。
「さて、ここが魔法の世界。そして、魔女の家だよ。どう?」
「どうって言われても……。まあ、驚いた。こんな古い家の中に森があるなんて普通はあり得ない事だからな」
「そうね。これくらいは本当にすごいと思ったわ」
「それだけで驚いてはいけないよ。さて、家の中に入ろうか」
「桐谷君、人って不思議な体験をすると、その後、それが現実だったのか、はたして自分の妄想だったのか。考えるとしたらどっちを選ぶ?」
「俺だったら妄想であってほしいな。現実だったらそれだけ恥ずかしいだけだ」
そう不意を突かれた俺は後者を選んだ。
その様子をクスクスと笑い声がしてくる。長塚は相変わらず、何を考えているのか分からない。時坂は大抵分かる。
「それにしてもよくこんな所に家を建てたものね……。私が魔法使いだったらこんなぼろ屋の家には作らないわ」
呆れた表情で時坂は腕を組みながら俺と一緒に長塚の後ろを歩く。
「……そこが、魔女と人間との違いなんだよね」
長塚は俺と時坂を同時に見て、風のようにどんどん前に進んでいった。彼女の周りの空気が変わる。
「意味不明」
そんな事を呟く時坂は冷たい表情をする。竜と虎、絶対に分かり合う事の出来ない対立の敵同士。
「そう。それくらい理解できないとね……」
本当に俺だけ一人置き去りにされる。俺は一体なんだ?
時坂が睨みつけて、気を引き締める。
「やはり、時坂さんの方が適正高いかもね」
「それはそうよ。私はいつも冷静だもの」
この二人は息が合っているのか合っていないのか、俺はハラハラドキドキしながら心臓に大きな負担をかける。女はワカラナイ。
それにしても、何とも美しい家なのだろう。
あと、木の枝にはリスや小鳥がいて、不思議の国といってもおかしくない。むしろ、俺もこの家に住みたいくらいだ。
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