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「そうですか。昔、私の知り合いに似ていたものなんで……。すみません。それであなたはどうしてイギリスの地を観光に? 未成年が一人で海外旅行なんてご両親はそれほどあなたを信頼されているのですね」
少女に言われて、竜二は目の前にいる少女をもう一度見た。
彼女がそこまで初対面である自分に対して、ここまで優しくしてくれるのはその誰かに似ているからだろう。その誰かは竜二にも心当たりがあるようでない。いや、一つだけその鍵となるキーワードがある。
それにしても、彼女の体内から不思議な力が感じる。なんだろう? 分からない。
「私の名前はミラ・アルペジオよ。よろしくね」
「ミラ・アルペジオ……。なあ、その俺によく似ている人物の名前って火神紫苑って言う人物じゃないのか?」
だから自分の口からその名前を口にすると、彼女は驚いた顔をした。
「あなた、一体何者なの? なんで、彼の名前をあなたが知っているの⁉ その人は今どこにいるの? いや、その話し方や声色が少し幼いけれど、似ている箇所があるわ……」
ミラ・アルペジオが
今までが嘘のようにこの空間の雰囲気が変わる。華麗な少女の表情は微笑んではいるが、その微笑の裏が恐ろしさを生んでいる様に見える。
「そう。火神紫苑が今、どこで何をしているのか教えないつもりね。だったらこちらも実力行使で教えて貰うほかに手段が無いわ。それでも構わないかしら? 言っておくけど、私、こう見えても強いわよ!」
彼女が言っていることはハッタリなどではない。本気の目をしている。
そう思った竜二は、周りを見渡す。周囲には誰もいない。ミラは言葉をつづけた。
「周囲を確認しても無駄よ。人払いの魔法をかけてあるから……。さて、彼の居場所を教えて貰うわよ。少し、痛いかもしれないけど、我慢してね?」
次の瞬間に起こったことは、竜二でも予想できない出来事だった。
彼女の右手には、紫色の魔法で込められた魔力が集まっているのだ。
「これを人に見せるのは嫌だけど、あなただったら死なないと思うわよ」
突如として現れた謎の魔法。
その紫色に光る球は、小さな稲妻を走らせている。小さな魔法かもしれないが、それが魔導師の能力によっては威力も変化するのだ。
「さて、これでも最小限の手加減はしているつもりよ。大人しく、彼の居場所を吐いてはくれないかしら? 私達から姿を消してから七年ほど経つ彼に直接聞きたいことがあるのよ。だからお願い、教えて!」
と、態勢を変えて、戦闘準備に入るミラ。
もちろん、竜二は魔法を扱うことは出来ない。
「……な、何なんだ? それって魔法じゃないよな?」
「ええ、これは魔法よ。世界でも一割しかいない魔導士が持つ力。これはその初歩的な魔法よ」
「魔導士、魔法」
火神紫苑、イギリス、魔導士、魔法、美少女————。何も繋がらない。
竜二は絶句した。魔法は何度も紫苑に教えて貰ったことはあるが、こうして、紫苑以外の魔導士とあると話が別だと分かった。なんだか、おとぎ話以前の問題だ。
「おい、おい。マジで一般人にやる気かよ……」
「ええ。私だってこんなことはしたくないの。本当よ。でも、これは仕方のない事なの」
苦笑しながら言う竜二に、ミラはバツが悪そうに言う。
そして、その魔法は生きているような錯覚を漂わせる。このミラ・アルペジオという少女が一体、なんで竜二に対して恨みを持つような会話になっていくのか。すべてが実の兄・紫苑のせい以外、何もない。
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