3
夕暮れの街。
鮮やかなだいだい色で染め上げられた公園。
もうすぐ今日が終わろうとしている。できれば、もう少しだけこの止められた時間の中で過ごしたい。その思いが、
そう思いながら池の中央に浮かんでいる小さな島のブランコに揺られながら陽が涼むのを見守っていた。
すると、背後から誰かの気配がしたような感じがした。
その気配は、背後からではなくいつの間にか目の前にいる少女からのものだった。
竜二が彼女の存在に気付くと、目が合った瞬間、声を掛けられた。
「すみません。いきなりでご迷惑かもしれませんが、少し訊きたいことがあるのですが……」
その綺麗な透き通った声だった。
少女の姿をはっきり見ると、見惚れてしまう程のスタイルだった。
竜二より少し背は低い。身長一六〇センチ前後くらいだ。おしとやかな正確な雰囲気を漂わせており、まるでどこかのお嬢様のような気品のある少女だ。
彼女は長い白銀を冷たい風になびかせながら立っていた。
その白みがかかった銀髪は、夕日をバックにするとオレンジに染められる錯覚を漂わせる。
吹雪が周りを真っ白にするような白と銀の髪。それが一段と彼女の華麗さを引き出させる。
それでも日本にはいない少女の美しさが、竜二の心を射止めるようだった。
美しき造り上げられた美貌。そして、イギリス、ヨーロッパならではの髪、モデル体型の体。一度見ただけで、また、運命という言葉があるのなら夢にまで出てきて欲しいほどである。
「私、この街に住んでいる者なんですけど、見たことのない顔だったので声をかけたのですが、観光とかそんな所なのですか? アジアの人で日本人の方はここらでは珍しいものでして……」
これが、彼女と竜二の出会いだった。
この運命すぎる出会いは物語のトリガーとなるとは、この時の二人は思っていなかった。
× × ×
「……ええと、こっちに来て初めて声を掛けられて困っているんだけど、どう、言葉を返せばいいのかな?」
竜二は、困った表情を見せながら話す。
それを聞いて、銀髪の美少女もまた同じように苦笑いをした。
異国の人と話すだけで緊張するのに、この美少女になるとその気持ちが上がってしまう。
黒一色のワンピース姿で、長袖の格好をしている。その美しさとワンポイントのワンピース姿が、センスがいいと言ってもいい。これだけで、グラビア撮影とかできそうな雰囲気だ。
「……それにしてもあなた、なんとなくどこかで見たような顔よね。イギリスには来たことはあるかしら?」
「いや、今回が初めてですけど……」
笑顔を忘れなない穏やかな少女が再び口を開いた。
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