神具
俺たちが
「再接続できるのか?」
クレイバーさんの問いにこくりとうなずく。
リーンという音を発するリンカーの刀身から、なにか波動のようなものを感じる気がする。それに共鳴するように
「
願いを叶えると言われている神具の願いを叶えた?
数秒待ったがなにも起こらない。リンカーに反応したように見えたのは勘違いか? と思った矢先になにかが聞こえた。
「ワタシに語りかける者は誰ですか?」
それはわりと幼い女性の声に聞こえた。
「わたしはアムサリア、おまえの願いを叶えた者だ」
「概念伝達ではなく、心力による思考伝達術か」
「
神具である
「アムサリア、罪深き下等種族よ。ワタシは
丁寧な口調で感謝すると言いつつも、罪深き下等種族と見下す物言いに、俺は嫌悪感が湧く。
「数百年の苦しみとはわたしの比ではないな。だが、感謝の念があるというなら是非教えてもらおう。おまえはいったい何者なのか」
神具に対して何者とは質問の意味からしてわからない。だが、そのアムの質問と俺の疑問に
「ワタシの名はシルン。そなたたち下等種族が現れる前から、この惑星に繁栄する高位種族の天人類。そなたら下等種族からは天使と呼称されている者です」
シルン。それは伝説にある
「ではシルンよ。なぜおまえは
「それは違います。ワタシは
アムの問いに対する回答は驚くべきものだった。
「心願集積装置……?」
「組み込まれただと? いったい誰がそんなことを?」
「人間世界の中心、聖都と呼ばれる場所の支配者たちです。遠い昔、人間と天使の闘いがありました。そのとき、そなたたちの祖先は我ら天人類の力の源とされる蒼天の秘密を探るために、天使であるワタシを捕らえたのです」
「人間と天使の闘いだって?」
俺は思わず声を上げてしまった。人間と天使の闘いなんて歴史は聞いたことがない。いったいつの頃の話なのだろう。
「蒼天とはいったいなんだ?」
アムは天使との闘いに感心を示さず、蒼天について問い返す。
「この世界の力や成り立ちを
装置とはすなわち誰かが作った物ということだ。神具とされている
「任意ということは誰がなんの願いを叶えるか決められるということか。つまり、わたしの願いをあんな形で叶えたのはおまえなのか、天使シルン!」
アムの言葉はわずかに心の乱れが感じられる。
「……あんな形とはグラチェを母体とし、そなたの半身をエイザーグとすることですね」
アムは無言で
「聖闘女リプティのような英雄になりたいという願い。それはすなわち聖闘女リプティがそうであったように『英雄』には『宿敵』が必要ということ。アムサリア、そなたが宿敵を望んだのですよ」
「わたしが……? そんなバカなことがあるか!」
否定するアムの言葉を受けて、さらに続けた。
「何千何万という溢れる願いの中で、そなたのリプティへの強い
「別格だと?」
「そうです。それは強さだけではなく、わたしの願いと同調したのです」
天使の願いとの同調。このことが、アムに悲劇をもたらした要因なのだと、俺は緊張に息を飲んだ。
「
「蒼天によって、作られた世界……」
クレイバーさんの口から漏れたつぶやきも、たいそうなことで気になるのだが、俺は英雄願望というこの言葉に、強い
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます