放課後エアホッケー

街宮聖羅

Air Hockey.1

「………あなたはいつになったら私を楽しませてくれるのよ」



一頻りの汗を流し、膝まづいている男性の目前に立場たかる制服を着崩したJK。男性の方は息が切れて顔を上げることすら困難な様子。周囲に誰もおらず、二人だけの貸し切り空間と化している。



「………黙れよ。その口から弱音を吐かせるまで俺は挑み続けてやる」



「――はぁぁ。あのねぇ、そう言ってから何ヵ月経ってるか分かってるの?」



「…………五ヶ月だ。たったの五ヶ月」



「今日はもうおしまいにする?私の方も...あなたほどではないにしてもかなりの体力を消耗してるからそろそろやめたいのだけれど」



「い、いや待ってくれっ!あと一回、あと一回だけ勝負しろ!俺と…………この台で勝負を……」



「―――フフッ。次もまた負けるのに?」



 「そんなの………やってみないとわかんねぇよ」



 そう宣言した男子生徒は制服の袖を捲り上げて、二の腕で額の汗を拭き上げる。対する女子生徒も艶の出ているロングヘア―をポニーテールに結びなおし、同じく袖を整えた。男子生徒が卓球台にも似た台の側面にある狭き挿入口へ手に握っている二枚の硬貨を順々に入れていく。その直後、二人が向かい合う間にある台―――フィールドが起動した。準備が整った二人は四隅にあるラケットのようなものを手に取って身構えた。開始のゴングが鳴ると同時に、フィールドの主が高らかな声で勝負開始のセンテンスを読み上げた。


 

 「エアホッケー…………ファイッ‼」



 右側面の得点盤から赤いパックが彼の自陣に流れ込んできた。



 

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