第4話 ロリと猫が意気投合したらしい。
「では改めまして、私は4年生の
天ノ川さんの第一印象は、制服の中にスイカを2つ隠しているような巨乳と、腰まである長くて
共学なら男子全員の注目を集めるだろうし、同性からも特別な目で見られているのではないだろうか。
「この部屋の室長は甘井さんですけど、甘井さんも新入生ですから、学園のことや寮のことでわからないことがあったら私に何でも聞いてください」
「えっ? 僕が室長だったんですか? 室長って何をすればいいんですか?」
「裁量権があるだけで、義務は特に何もないですよ。それでは、室長の甘井さん、自己紹介をお願いします」
「え~と、先に天ノ川さんに、お尋ねしたいのですが、ここって女子寮じゃないですか。僕がこの部屋に居てもいいんですか?」
「はい、たしかに昨日までは女子寮でしたけど、今日からは違いますよ」
「でも、相部屋ですよ。まずくないですか?」
「いいじゃん、べつに。オレは昨日までずっと弟と一緒の部屋で寝てたし」
さっそくネネコさんが味方になってくれた。これは心強い意見ではある。
続いて天ノ川さんが僕の質問に答えてくれた。
「この部屋の女子は全員保護者の同意をもらっているはずですから、特に問題ありませんよ。それに異性と一緒に暮らすことに慣れておけば、将来きっと役に立ちますから、決してまずいという事はありません。ただし、嫁にも婿にも貞操観念は必要ですので、風紀を乱さない努力は、お互いに必要となってくると思います」
言われてみれば、たしかにそうかもしれない。女性の事を何も知らない状態で、いきなり婿入りというのは無謀ともいえる。互いに異性を知るということも、おそらく修業の一環なのだろう。
「あの~、すみません……ていそうかんねん……ってなんですか?」
黙って話を聞いていたバス酔いの子が天ノ川さんに質問する。
「簡単に言うと『心と体が清らかである事』ですよ」
「あっ、それなら分かります。『清らかなセンパイ』となら、お部屋がおんなじでもいいと思います」
「ふふふ、そうですね。……というわけで、やましい心さえ無ければ、何も問題ありませんよ」
「分かりました。僕を受け入れてくれて、ありがとうございます。では、自己紹介ですね。え~と4年……何組なのかな?」
「この学園は全学年1クラスだけです」
そういえば「生徒数がとても少ない学校」と入試前に佐藤先生から聞いていた。
「ああ、それでクラス発表がなかったんですね。では改めまして、僕は4年1組の甘井ミチノリです」
「え~っ!?」
ネネコさんが、またしても大声を上げる。
「ドーテーじゃなくてミチノリって読むのか~」
あ、やっぱりそうでしたか。僕も途中から、そんな気はしていました。
「ドーテーのほうが強そうなのに~」
あ、さっきの僕の説明は全然聞いてくれていませんでしたか……。
「じゃあ、次はオレの番だね! 1年1組、
子猫と書いてネネコ。ネズミとネコでネネコだよ。夜中の12時に生まれて猫みたいな声だったから……ってパパが言ってた!」
なるほど、
弟さんはトラ年らしいし……。ちなみに僕はトリ年だ。
「弟と遊ぶのが好きで、弟がいないとつまらないかと思ったけど、面白そうなセンパイと一緒の部屋で、よかったです。さっきまでは2人がセンパイだって知らなくて、いろいろと失礼な事言っちゃって、ごめんなさい。暇なときはオレと一緒に遊んでください! よろしくお願いしま~す!」
ここでは僕が弟さんの代役なのだろうか。それはそれで面白そうだ。
最後にバス酔いの子が自己紹介をする。顔色はだいぶ良くなっているようだ。
「1年1組、
ホオズキと読むのか。珍しい
先ほどは顔色が良くなかったが、こうして改めて見るとネネコさんに負けないくらいかわいい子だ。ネネコさんとは逆に、やや垂れ目なので穏やかそうに見える。
肩にかかるくらいの髪を両耳の上でまとめた短めのツインテールと、少しふっくらした
棒読みっぽい独特のイントネーションではあるが、共通語で話してくれている。
見た目の可愛らしさに加えて、その仕草や声までもが、とても可愛らしい。
ちなみに「ポロリ」さんの名前のイントネーションは、「ネネコ」さんと同じ「↑↓↓」ではなく、おっぱい「ポロリ」の「↓↑↓」でもない「↓↑↑」が正解で「ミユキ」さんや、僕の苗字「アマイ」と同じイントネーションだ。
この説明でお分かりいただけるだろうか。
「甘井センパイ! ベッドまで運んでくださってありがとうございます! お陰様でポロリはもうすっかり元気です!」
「いえいえ、どういたしまして」
「天ノ川センパイ! ポロリも先輩のような素敵な女性になりたいです! ご指導よろしくお願いします!」
「素敵だなんて、そんな……こちらこそ、よろしくね、
「蟻塚サン! ポロリも一緒に遊びたいです! 今日からポロリとお友達になってください!」
「お、おー、いいんじゃね?」
僕を含めて3人に対し、ひとりひとり深々と丁寧に頭を下げて
ホオズキさんは健気で礼儀正しい子だ。
「え~と、ドーテークンじゃなくて、甘井ミチノリ先輩。おっぱいポロリのほうが天ノ川ミユキ先輩で……ほーずきポロリは、ただのロリ。……よし! 覚えた!」
ネネコさんは対照的に「おっぱいポロリ」とか「ただのロリ」とか本人の目の前で平気で口にしている。
僕はいくらなんでも「ただのロリ」は失礼なんじゃないかと思ったのだが、呼ばれた本人はまるで気にしないどころか、
「えっ? ロリって呼んでくれるの⁉」
そう言って、嬉しそうに笑いながらネネコさんに近づいた。自分の事を悪く言われたなんて全く思っていないようだ。
会話は「言葉のキャッチボール」というが、今の会話をキャッチボールに例えるならば、ネネコさんの大暴投をホオズキさんがスライディングキャッチしたようなものだろう。そして、そのボールをホオズキさんはレーザービームのように見事にネネコさんの真正面へと投げ返す。
「ロリって『小さくてかわいい女の子』って意味だよね?
ポロリの事そう呼んでくれるなら、とっても嬉しいの。
ポロリはネコちゃんって呼んでもいい?」
「そ、そんなのロリの好きにすればいいじゃん……」
「うんっ! よろしくね! ネコちゃん!」
僕は驚いてしばらく声も出なかったが、隣で見ていた天ノ川さんも同じだった。
天ノ川さんと僕はお互いに顔を見合わせて、2人で苦笑いしたのだった。
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