22.対決

 翌日、決勝を間近に控えた午前九時。


「本当にいいんだね?」


 一度ホテルへ戻り、帰ってきた日本キャンプでマスタージョエルは問いかけます。


「はい」

「……わかった、ではチームアンドラの――」


 うなずいたさく。それに渋々といった様子で返したマスタージョエルの目が朔たち騎士見習スクワイアチームの隣へと移されます。

 

「ウーナです、おじさま」「ヨンです」

「うむ、貴殿らの友情に心からの敬意を。騎士シナツ、リンにかわっての援軍に感謝する、騎士ウーナ、ヨン」


 剣をかたわらに片膝をついた二人をねぎらい。ウーナたちはと澄ました顔で応じました。


「全力を尽くします」





 昨夜、フラフラでテントに戻った杏樹あんじゅりんを迎えたのは四夏しなつたち三人とチームアンドラの三人組でした。


「そろそろ話もまとまると思ってさ。下準備をね」


 香耶乃かやのが並びのいい歯をのぞかせたのを、凛はじろり。


「ブルドッグをけしかけたのはあなた?」

「まさか、鎧の着付けは手伝ったけどね。ただこうなるだろうとは思ってたよ。凛ちゃんはなんだかんだでトモダチ思いだしねぇ。おっと!」


 イッヒヒと笑う香耶乃に脱いだヘルムを押し付けると凛は一団を突っ切って奥へ。


「シャワーを浴びる。鎧も汚れたから洗う。あと剣」

「い、今からですか? ホテルに戻ってからじゃ……うわ」


 剣を受け取った朔が習慣のように正面に立ててチェック、眉をしかめます。


「あちこちガタがきてる、けど、明日には間に合わせ、る」


 バスセットをとって出ていこうとする凛を香耶乃が呼び止めました。


「待った一人じゃ不用心だよ。杏っちゃんは……ダメだ死んでる」


 丸イスを並べた上にうつぶせでぐったりした杏樹は戻ってからひとことも発していません。チームアンドラからマリアが手をあげました。


「あっじゃあ私が行きます。ヨン、あとお願いしていいでしょ?」

「いいけどよ……アンタら本当に決勝出るつもりなんだな」


 見回したヨンが怖々といった調子で訊ねます。杏樹と凛はいわずもがな、朔と香耶乃もイスから立とうとはしません。四夏にいたっては要観察をうけたままのジャージ姿でベッドに体を預けています。


「当、然」

「よく言ぅ」

「り、凛ちゃん……!」


 突っ伏したままの杏樹をひと睨みして仮設シャワーへ向かおうとする背中を四夏は呼び止めました。


「なに」

「あ、えっと、き、気をつけて」

「何それ。……心配むよ、う」


 そっけない反応にじくりとうずく胸の底。押さえた手を握り拳にかえて一度深く目を閉じます。開ればもう夜闇に開いたテントの出口があるだけでした。

 香耶乃が手を打ちます。


「さて、じゃ具体的な話を詰めようか。替え玉作戦の」





 "Battle in Legendaryバトルインレジェンダリ "

 その決勝を告げる空砲が真っ青な乾いた空にパツパツと響きます。

 キャンプを出てほっと息を吐いた一行に険しい声がかかりました。


「――信じていいのね?」


 振り返れば野木のぎ女史が追いついたところ。疑わしげな目は主に香耶乃へと注がれています。


「……もちろんです」

「三木田さん、あなたの目的はこの大会と騎士団ウチを使ったプロモーションだったわね。仮になにかで信頼を損ねたとして、簡単に取り戻せないのは分かってる?」


 香耶乃の指先が丸メガネに触れ、そっとツルをなぞって離れます。


「たしかに信頼はどんな契約よりも大切ですけど。こと決戦にかぎっては泥をかぶるまでが軍師わたしの仕事なんですよね」


 苦笑して歩き出そうとしたその手首を野木女史がとっていました。向けられる厳しい表情。


「……安心してください。野木さんが心配されるようなことは絶対にありません」

「本当に?」

「誓います。誓って瀬戸さんやすえさんをフィールドには立たせません」


 四夏は胸がキュゥっと締め付けられる思いでした。普段通りの態度で並べられた言葉は嘘八百うそはっぴゃくで、それにより彼女が何を失うことになるのか火を見るより明らかで。


「そう。なら後悔の無いようになさい」


 そうさせた当人に何が言えるだろうと躊躇いながら歩くうち、香耶乃のブーツ跡に毅然きぜんともう一人分が寄り添います。


「一人で泥なんてかぶらせません。リーダーはアタシです」

「……私はみんなに日の目を見せてあげたいのさ。もちろん朔っちゃんにもね」


 金環きんかんをくりぬく黒漆うるしがはげた兜の前立てを、避けるようにのばされる手のひら。それを払いのけて朔は言い返しました。


「なら、勝って二人で謝りましょう。優勝すれば軍師じゃなくて友人ですよね」


 きょとんとする香耶乃。やがて、

 

「……あったねぇ、そんな約束」


呆れたようにあさっての方向を向くと、その先で目が合った四夏へはにかんだように笑います。



 白茶けた大城壁の前に設えられた決戦の戦場門フィールドゲートは予想の何倍もの人垣で囲われていました。華やかな中世衣装に身を包んだ観客たち。


「決勝だけは大人たちの試合と被らないんだ。ここまで来ちゃえば何しようが分からない」

「皆さん、皆さん……!」


 人の壁から息苦しそうに呼ぶ声。ひとり別行動をとっていたマリアが顔だけを出して手招いています。


「よかった無事で。これ、お返ししますね」


 重たげに差し出されたのは二人分の鎧袋。その持ち手は真っ赤に汗ばんだ手にくい込み、道のりの険しさを訴えてくるようでした。


「ありがとう、マリアさん」

「いえいえー、傭兵フリーランスのお返しを少しでもしたいですしー」


 礼を言う四夏に返されたのはやり遂げた笑み。

 胴衣タバードをまとう三人が壁になり、その真ん中で四夏と凛はアンドラ組の手を借りつつ鎧を着込んでいきます。ジャージ下に着る偽装のため綿わたを薄くした鎧下ギャンベゾはいかにも頼りなく感じました。


「シナツ、緩衝材パッディングこれだけで大丈夫~?」

「うん、少しでも軽くしたいから」

「おいこの鎧ゲロみたいな臭いがするぞ」

「それは、ゲロ」


 大急ぎの着替えが終わり、体を伸ばしたり曲げたりしながら最後の確認。凝り固まった筋肉をひきはがしながら向かう戦場も、次が最後だと思えば感慨深く思えます。


「シナツ。私ね~、あなたが羨ましいって思うの~」


 ぽつりとこぼしたウーナを見返しました。


「目指してきた山の頂上にもうすぐ手がかかる。私たちもついこの間まではそうだったけど今は……いい思い出になっちゃったから。もちろんすごく素敵な宝物だけど~」


 シナツのこともね、とウーナはためらいがちに四夏の肩へと触れました。


「ウーナ……」

「だから楽しんできて。今だけの眺めを」


 それから決勝のフィールドへ繋がるゲートをまぶしそうに見やって。ぐんっと大きな身体が四夏をそっちへ押しやります。パシパシと二つの手のひらがそれに続きました。


「行ってこい、オマエは俺らのヒーローだ」

「他のどんなプレイヤーより、貴女とチームメイトが騎士見習スクワイアの称号にふさわしいと思う」


 ヨンとマリアの激励も受けて、大人たちをあざむいた後ろめたさを今は飲み込みます。


「準備はオーケー? ゴメンけどちょっと予想外のことになってる」


 手を掴んだ香耶乃があごをしゃくったその先は、スメデレヴォ要塞跡、大城壁に特設された大スクリーン。そこにはまさに今、四夏たちのいる入場ゲート前が大写しになっています。


「いっ、いつから!?」

「大丈夫、着替えはあたしが隠したからっ」

「そういうハナシじゃあないんだけどまあそれくらいだよ、たぶん師範マスターたちはこっちに向かって――」


 掴まれた腕が強く引かれました。香耶乃がそうした意味を考えるまでもなく察します。脇目わきめも振らず――下手に見回して目が合ったら足がすくみかねないと――一心にゲートを目指す五人。


「四夏っちゃん、先! 行ってできたら逆立ちくらいやってみせて、十五分後の私の命のために!」

「さぁっ!? 出来るわけ……!」


 開けた視界へふりそそぐ歓声と夏の陽射し。目がかすむほどの白い光のベールの向こうにパティたち【竜骸の聖堂ヴァヴェル】のメンバーたちが入場を待っています。


「四夏。――」

「凛ちゃん? ――うわっ」


 ゲートを抜けた瞬間響きわたるファンファーレ。耳を覆う金管の音色の中、前に出て振り向いた凛が下手したてを組みます。足場のように。


「肩は――?」

「――!」


 言葉こそかき消えて聞こえないものの姿勢が来いと招いていました。思い切って助走し彼女の手を踏み。


「――もう、好きにしたらいい」


 そんなつぶやきをかけ上がって高く宙をめざします。華やかに広がるような手足もなく、頂点で観客席におじぎをすると歓声と笑い声のまじったものが波となって押し寄せました。着地でばたついた体を支える腕。


「私も好きにする、から」

「う、ん?」


 感情の読みにくい声に見返したのと、後から来た三人が総出で四夏を支えたのは同時でした。


「大丈夫ですか」

「四夏っちゃん天才じゃない? あそこで頭下げるかねフツー」

「あ、ありがとう、平気。いや、だって……」


 その頭越しにゲートをみやれば顔を真っ赤にしたマスタージョエルが行き止まったところでした。ぶり返してきた罪悪感に一度目を閉じ――会場じゅうに響く雄叫おたけび。

 ただひとり、対面のゲートから飛び出してきたおおきな鎧影。【竜骸の聖堂ヴァヴェル】の歩兵フットソルジャー、なかでももっとも恵まれた体格を誇るアントニー選手が走りこんできます。彼は一度スキップをふむと。


「ひやぁ」「すご、マジだ」


 目を覆う杏樹とあっけにとられる香耶乃。地面についた両手と引き換えに両足を天高く上げたアントニー選手に四夏もまた目を奪われます。そして。


「――、」


 つづく鈍白にぶじろの彗星に息をのみました。

 真っ赤なスカート、白地に花模様の旗飾バナーが彩る戦装束いくさしょうぞく。炎のような彼女は昨夜の車いす姿が幻だったかのごとく軽やかに、正立したアントニーにジャンプ。

 飛行機みたいに腕を広げたのをアントニーは両手で軽々とかかげてみせます。ひとしきり観客席にみせびらかした後、ふとこちらを見て。


「ちょ、ちょっとトニー、降ろしてってば!」

「わっはっは!」


 のしのしと近寄ってくるとマネキンでも置くようにパティを四夏の目の前へ立たせていきます。去り際に、


「姫との約定を果たしてくれたな、感謝する」


とだけ言い置いて。


「も、う。投げっぱなしなんだから」

「パティ……」


 面覆バイザーを上げる四夏。けれど微妙にそらされた視線のせいでパティの目窓めまどの奥はうかがえません。


「来たの、ふうん」

「うん、来た」


 不安な心に深呼吸。先に距離をおきかけたのは四夏のほうで、なら今それをあるべき形へ戻すのも自分だと言い聞かせて。


「あなたに会いに」


 肺がぺたんとつぶれるような緊張はパティにも伝わったらしく。息の止まったような硬直のあと。


「……会うだけ?」

「同じだよ。だって、戦わなきゃパティのことはわからない」


 そのガントレットがもどかしそうにヘルムを外します。陽光すら吸い込んで凝縮させたような編み込みの金髪が、切子細工カットグラスのようにきらめきました。


「ワタシも、シナツに会いたくて来たわ」


 まっすぐに四夏を射抜く目。きつく踏みしめられたブーツの足先はそれ以上前に出るのを抑えているよう。


「ホントはね、ちょっとだけ怒ってたの。転校したとき。ワタシが抑えられない気持ちをシナツは抑えて生きていて、普通の人みたいな顔をしてて。だから絶対、ワタシからは仲直りしてやるもんかって」

「そう、だったんだ」

「でも帰国してから思ったの。シナツのかみさまがそれを望まなかったなら仕方のないことだったって」

「かみさま」


 四夏はそっと左そでを腰にこすりました。かつてそこにいた誰かを思い出すように。


「シナツ、あなたのかみさまはまだそこにいる?」


 再開したその日に投げかけられた問い。それに。


「ううん」


 四夏は首を振りました。


「やっぱり!」

「でも、」


 ぱあっと顔を輝かせたパティをさえぎって。


「あのときの自分が間違ってたとは思わない。わたしはあの日の続きをしにきたわけじゃない」

「じゃあ……?」


 ひと呼吸。海を越えてから今までを思い出します。初めは朔や香耶乃の目的のため。参戦後はただただ上をめざして。けれどこの決勝だけは誰でもない四夏の希望によるもの。


「思い出したんだ。鎧を着て戦うのが楽しいって」


 自分が一回り大きくなれる感覚。それを頼りにただ一人の相手と気持ちを共有できる高揚感。小学校以来、四夏が忘れて久しかったこと。


「パティと戦うのが一番楽しかった。だから何度でもやりたいしお互い笑顔で終わりたい。この先ずっと」


 壊れないし、壊させない。それはパティと決勝を争おうと決めたとき一番においた大前提でした。チームメイトの覚悟をいている以上、そしてパティ本人のためにも自分は無事でなければならないと。


「ふぅん、そう、そうなのね。シナツ、ワタシは違うわ」


 どこか白けたように、けれどそんな興ざめをも楽しもうとするように熱を帯びた声。


「ワタシは今日、死んでもいい」

「……っ」


 ぼっと首の後ろが熱くなるのを感じます。気圧けおされぬよう唇をきつく噛んで妖艶ようえんな瞳を見返しました。


「一度でいいの。命がけの戦いがしたかった。シナツと。それだけでワタシの人生には意味が生まれるから。他人なんてどうでもいい、世界でいちばん美しい戦争が起こって終わる、それだけで充分だから」

「そんなの……っ」


 陶然とうぜんとした言葉を否定する論理を四夏はもちませんでした。かつてぶつけた小さな倫理観は十七歳の彼女という圧倒的な存在にとどくとはもはや思えず。


にさせてあげるわ、しようのないシナツ」


 現在いまならばそれができると言いたげな自信に満ちた含み笑い。


「なっなら、わたしも、」


 鼻がふれるほどの至近距離に一線を引かなければと考えなしのまま四夏は口を開きます。


「ぜったいっパティを満足させない。もっともっと、何度だってしたくなるような試合にしてみせるから」

「……ふふっ」


 まばたきひとつ、パティはうっそりと目を細め。


「ひゃ」


 がちゃんと四夏の体を抱きしめました。


「素敵ね、そんなことができるなら」

「だっ、パティっ試合前――」

「――シナツの言う通りよ。ワタシたちがこうして出会った以上同じことになる。どんな名分を立てようとも」


 離れていく鉄と砂とパティのにおいが交じった空気。数秒ぶりにみた表情はどこか気まずそうなもの。


「昨日はごめんなさい」

「いいよ、わたしもごめん」


 あぁ、世の中がこんなささいなことで済むすれ違いばかりならどれだけ楽だろうと。今だけは固くした表情筋をゆるめます。

 ヘルムをかぶりかけたパティもつられたように破顔しました。


「やっぱりシナツはワタシの天使よ。ぜんぜん思いが伝わらない所も含めてね」



 【竜骸の聖堂ヴァヴェル】の戦列には新たに一人が加わっていました。


「はじめまして。ミハウ・スヴェルチェフスキです。竜骸の聖堂ヴァヴェルの〈従軍聖職者チャプレン〉です」


 差し出された小さめの手を取りながら四夏はぱちくり。


「チャプ……?」


 隣の香耶乃に目をやるも反応は困惑。替わって反対側の凛が疑問に答えました。


従軍聖職者チャプレン。もっと大きな百人規模の歴史再演戦闘リエナクトメントで医療スタッフをそう呼ぶことがある。ポジション名じゃな、い」

「お気になさらず、勝手に名乗っているだけですから」


 人懐こそうに肩を揺らすミハウ。


「それよりスヴェルチェフスキ、って」

「ええ、姉がお世話になっています。セトシナツさん」


 パティと同じ聖十字の目窓からのぞいた目にぎょっとします。右半分はパティによく似た端麗な面差おもざし。一方で左側には大きな傷跡がはしっていました。しおれた木の実ように落ちたまぶたを割る褐色のみみず腫れ。相当に古そうなそれに四夏はなぜか、尖った小枝かなにかで斬り上げられたイメージを幻視します。


「失礼、お見苦しかったですね」

「いや、その」


 とっさの反応を取り繕うより早くパティがミハウを呼び戻しました。


「ミハウ、もういいから控えていなさい」

「はい姉さん」


 折り目正しい礼をして下がった彼の快活さと、恥部を隠すようなパティの声色が対照的でした。

 入れ替わりにスレンダーな鎧影が進み出ます。〈鼓笛手ファイファー〉のナタリアは四夏の手前で斜に構えると無言でこちらを見据えました。


「……あ、の」

「あなたがトリシャをとらわれからけるとは思えない」


 射殺いころさんばかりの視線は昨夜、パティの車椅子を押してテントを訪れたときのまま。


「やれるのならやってみればいい。そうしたら……あなたを」


 言いかけてぎゅっと眉間にしわを寄せるとナタリアはきびすを返しました。正面からその肩を抱いた歩兵フットソルジャーのレオを押しのけて、躊躇ためらったあと振り返り最後に。


「昨日のトリシャの姿を見て、もしも手を抜いたりしたら許さないから」

「は、い」


 うなずかされた、といっていいでしょう。追って四夏はその戸惑いにあらためて自ら決着をつけます。

 全力でパティと戦いそして、彼女の期待も自分の誓いも裏切らないこと。それを胸に刻みなおしたとき、再びパティと相対した四夏の胸におこったのは静寂。


「不思議ね。他人なんてどうでもよかった。でもいつの間にかチームができて、皆に助けられてワタシはここにいる。それが少しだけ誇らしくて、今は寂しい」

「うん。わかる」


 四夏もこの一年と少しでどれだけのえにしを結んだかわかりません。お城の騎士たち、甲冑師かっちゅうしの赤根谷翁、出版社やアクションクラブの人々、剣を交わしたライバルに、何にも代えがたいチームメイト。それら出会いの全てがこれからの戦いを固唾かたずをのんで見守っている気がして。


「あぁ、その目。懐かしいわ。がんじがらめになって全部投げ出す前の顔」


 うっとりとした声を遮るように手をかざしました。


「投げ出すんじゃないよ」


 ただ心のスクリーンに焼き付けてしまい込むだけ。自分は目の前のことしかできなくて、それでも進むべき方向を見失わないように。


「パティだけを見るため」

「……はぁ」


 顔を押さえたパティは審判の指示を待たず開始線へと歩き出します。


「ズルいわ、ワタシばっかりこんなにクラクラさせられて。もういい――」



「――戦争をしましょう、シナツ」





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