恋愛?それ、友情と何が違うの?

如空

高校生編

第1話 「初恋」に至るまで

「俺と、付き合ってくれないか?夢子」


 私の「初恋」は、こうして幕を開けたの。


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 遡って、高校の入学式の日。


 新しいクラスメートのみんなが、自己紹介している。


 新しい環境に慣れない人たちから流れる、僅かな緊張感のせいで、いざ自分の番が来ても、言葉少なの子も多い。


 そして、順番は、私がクラスを初めて一通り見たときからマークしていた、イケメン君の番になる。


 颯爽と立ち上がるイケメン君。凛とした声が、教室内に響く。


「俺は、涼。中学では野球をやっていた。高校でも続けようと思っている。みんな、よろしくな」


 クールに言い放った涼を見て、私は、思ったの。


 やっぱり、女子高生の青春と言えば、野球部のマネージャーよね。


 え?古臭いし、汗臭いって?


 いいじゃないの。少なくとも、涼のような長身のイケメンが一人はいるんだから。その近くにいるだけで、青春スポーツの一人の演者になれるじゃない。

 そして、そうすれば、きっと私は、「真実の愛」を見つけられるはずよ。


 そう思って、私は迷わず野球部のマネージャーをやることに決めたの。


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 自己紹介が終わり、解散になる。


 廊下を歩きながら、私と、中学以来の同級生で、今年度も同じクラスになった親友の花とは、ちょっとしたガールズトークを繰り広げていた。


 ふと花が、愉快な話題を見つけたとばかりに、ことさらに明るい調子で言う。


「どうだった、夢子?夢見る夢子ちゃんのあんたにふさわしい、イケメンな白馬の王子様は、見つかった?」


 私は、一人引っかかった涼が思い浮かんで、赤面するのを感じたので、ごまかすように言い返す。


「ちょっと、花、からかわないでよ。それに、一日で分かるものでもないと思うわ」

「ふーん、そっか。まあ、そうだよね。じゃあ、あたしはこれから彼氏とデートだから、また明日ね」


 花が、染めてできた金髪をなびかせながら、不気味にニヤリと笑う。


 まるで、いい子が見つかったのね、楽しみだわ、と言わんばかりに。


 全く、何よ。いい子なんだけど、恋愛についてはからかいが過ぎるわ。


 そんなことを思いながら、彼氏の方に走っていき、仲良く手をつなぐ花の後ろ姿を眺める。


(でも、私も、花にいつまでも負けてはいられないからね。華の野球部マネージャーの青春生活、待ってろよ…)


 私は、秘かにこぶしを握り締めたのだった。


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 涼は、確かに私が望んだもの、スポーツ系の青春にふさわしいイケメンだった。


 タオルの受け渡しの時にこぼす爽やかな笑み。


 たまたま登下校のルートが重なっていたことから、少しだけ一緒に歩いた通学路。


 試合で勝った時に見せる、底抜けに純粋な笑顔。


 負けてしまったとき、濃紺の野球帽を深くかぶって、うつむきながら、グッと涙をこらえている姿。


 でも、私は、どうしても、涼のことを友達以上には思えなかった。


 私の恋は、何もかもを備えていながら、その実何もない状態で、始まったのよ。


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 でも、その恋バナを始める前に。


「おはよう、夢子ちゃん」

「おはよう、太郎君。というか、私たち、そろそろ呼び捨てでもいいんじゃないかしら?いつまでも君付け・ちゃん付けじゃ、ちょっと恥ずかしいわ」

「そうかな?僕は、これも幼馴染同士っぽくて、いいと思うけどな」

「ほとほとあなたとは腐れ縁よね。幼稚園で一緒になってから、これで11年連続で同じクラスじゃないの」


 一人、紹介し忘れていたクラスメートがいたわ。


 入学式の日、クラスで聞いた第一声が、この太郎「君」のものだった。


 幼稚園の年長から、ずっと同じクラス。いい人なんだけど、11年も一緒だと、正直飽きるわ。


 彼の今の趣味は、ラノベとスマホのゲーム。青春を求める私にとっては、ちょっと地味すぎる。


 容姿も平凡で、眼鏡なんかもかけているし。


 でも、やっぱりいい人なのよね。私の青春物語とは切り離して考えれば、これでもいいお友達なのよ。

 中学の時に、私にだけ、照れくさそうに、作家志望なんだといって見せてくれた小説が、これまたいい話だったし。


 でも、このころの私は、ちょっと彼には冷たくしてたかな。


 彼という人を、まだ何も知らなかったから。


 幼馴染なのにね。笑えるよね。


 バカな私は、これから何年もの間、テンプレートな恋愛に「真実の愛」があると思って、独り突っ走っていくの。


 これは、そんなバカな私が、友情ではない、真実の愛に気付くまでのお話。


 前置きが長くなってしまったけど、次からは、早速私の「初恋」の話に入らせていただくわね。

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