第二十四話 ~加護~
神発暦3512年 夏
ぼくは今、父と共に領内にある創神教会に来ていた。
創神教とは、この世界で最も信仰されている宗教で、この世界を創った神様達、善神も悪神も両方が、我々人間を支えてくださっていると考える宗教である。そのため、悪神からの加護を受けても特段非難されることは基本的にはない。
「おはようございます。神父様」
「これは、これは、朝早くからよくぞおいでくださりました。神も天から喜んでいることでしょう」
神父様があいさつをすると、父が続けた。
「神父様、こちらが昨日お話しした。息子のレオンです」
「レオンと申します。今日はよろしくお願いします」
「はい、私はこの教会の神父をしておりますブリークと申します。あまり緊張する必要はありませんよ、神はいつでもあなたと共に、あなたを素晴らしい未来へと導いて下さります」
「はい」
「では神父様、おねがいします」
「それではレオン君。こちらへ」
ぼくは神父様に言われて、祭壇の前にひざまづき、手を合わせ目をつむった。そして、
「我らが神よ。どうかこの者に授けし祝福をここに〈
神父が魔法を唱えると、神父の前に金色の文字が浮かび上がった。〈
「これは!?」
「どうされました?神父様」
父が神父に質問した。
「いえ、少し驚いただけでして、レオン君もう大丈夫ですよ。体を楽にしてください」
「はい」
ぼくは体を起こし、神父様の方を見た。神父様は何やら紙に書いているが、別に〈
「神は君に何を求めましたか?」
「えっ!?」
何かを書き終えると、突如、神父様はぼくに質問した。
「何のことですか?」
「なるほど、いえ、申し訳ない。今の質問は忘れてください」
神父様は何かを悟ったように納得した。
「レオン君には非常に素晴らしい加護が授けられているようです。
まずマルク家にとって最も大事な〈戦神の加護・中位〉、さらに、〈滅神の加護・低位〉、そして最後にかなり珍しいですが〈運神の加護・中位〉まで授けられております」
「やった!」
ぼくはパレス先生の授業で戦神から加護を授けられていることは予想通りだったが、これほど多くの神様から加護を頂けたことを素直に喜んだ。
「なんと、それほど多くの神から我が息子は愛されているのですか」
「えぇ、3つも加護を授けられる者はそうそうおりません。しかも〈運神の加護〉がありますから、この先きっと様々な奇跡がレオン君を助けるでしょう」
「それは良かった。して、神父様。息子は【神の子】ではないのですか?」
「そうですね、残念ではありますが、高位の加護を授かっていないようなので、神の子としては認められていないのでしょう」
「そうですか」
父は恐らく、ぼくがオラクル・オーガを倒したと思っているので、ぼくが何らかの【神の子】だと思っていたのだろう。
ぼくはその時の記憶を現状思い出せていないが、もしかしたら、父は幻でも見せられてしまっていたのではないだろうか?と思った。
≪そうなると、オラクル・オーガは最低でも一体残っていることになる≫
ぼくはその危険性を危惧した。
「でもお父様、ぼくは戦神様から中位の加護を授かりました。将来、努力を続けていれば高位の加護を頂けるかもしれません。ぼくがんばります!」
「そうだな、さすがマルク家の子だ。戦神様の意思に応えられるよう頑張りなさい。それと、〈滅神の加護〉があることをパレスさんにいって、それにあった魔法修練を教わるといい」
「はい、そうします」
ぼくと父はそう言って、教会を出ようとした時、神父様がぼくの服のポケットに紙を入れ、小声で言った。
「後で一人の時に、これをお読みなさい。神からのお言葉です」
「え?」
「レオン!いくぞ」
「はい、お父様」
ぼくは驚き、どういうことか聞こうと思ったがすぐに父に呼ばれ、教会を後にした。
*
その後、父は少し疑念が残っている様子だったが、今日はめでたい日になったということで、夕食が豪華になるらしい。
父はこの後なにやら用事で領地の外れの方まで足を運ぶらしく、ぼくはウル爺がやってくるまで、敷地内にいるよう言われた。
≪何が書かれているんだろう?≫
ぼくはそう疑問に思い、神父様からもらった手紙を開けた。
≪え?≫
そこにはこう書かれていた。
*-------*
レオン君これは霊魂の神【ジーラ】様より受け取った
それと、恐らく貴族であるレオン君はこの後、聖堂に向かうことになると思います。その時に、司教様にこちらの紙を渡してください。
*-------*
恐らく、創神教のマークのある紙が司教宛てで、もう一枚が神様からの
日本語で書かれた文章をぼくは読み始めた。
*-------*
あなたを守るために、一時的に強大な力を与えました。その所為で、もしかしたら、体に何らかの支障が起こってしまっているかもしれません。
しかし、神による干渉は一度だけとルールが決められているため、あなたが今どんな状況なのかは教えることができません。
ですが、あなたが私にとって【神の子】である事実は変わりません。きっと私の加護はあなたを助けるでしょう。
頑張りなさい。
追伸 それと【アウスター】に借りを作りたくないので、できるだけ分解魔法を控えるように
*------*
「ぼくが【神の子】?」
ぼくは手紙を読んで疑問に思った。
「神父様は、ぼくは神の子ではないと、それに、〈霊魂神の加護〉をぼくは授かっていない」
*
戦の神の加護・戦闘に関わる主に付与魔法の発動を援助して、その性能を高めるとされる。
消滅の神の加護・分解魔法の発動を援助して、その性能を高めるとされる。
運の神の加護・未だに何の魔法を援助するかわかっていないが、この加護を授かったものには幸運が訪れるとされる。
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