第六話 ~守護魔法・盾~

 神発暦3512年 夏




 僕は今、パレス先生の家の庭に来ている。




「それでは、レオン君。まずは、戦闘魔法のうち守護魔法を教えます」




「はい」




「君は守護魔法を見たことはあるかい?」




「いいえ、ありません」




「では、見本を見せよう」




 パレス先生はそう言うと杖を前に構えて大きな丸く重厚感のある盾を出現させた。




「これが守護魔法の基本とされる盾その物を作り出す魔法だ。まずは、これをやってみるといい」




「はい」




 ぼくは、パレス先生の作り出した盾を想像しながら杖を前に出した。


 しかし、盾の形が出来上がろうとすると、霧となって掻き消えてしまった。




「こればかりは何度もやって、段々慣れていくしかないね、余程の天才でもない限り一発でできるようにはならないさ。


まぁ、そうだね、一度、瞑想しながら頭の中で想像すると出しやすくなる子もいるからやってみるといいよ」




「やってみます」




 ぼくはそういって、瞑想をしながら盾をしっかり想像した。


 そうして再度作ってみると今度は先ほどよりもくっきりと盾が形を成したが、また霧となってしまった。


 こうして、何度も繰り返し練習しているとついに。




「おっ、なかなか良い盾じゃないかな?見たものを再現する才能はしっかりあるようで安心したよ。だが」




 そう言うと、突如ぼくの作った盾を杖で叩いた。すると、盾が割れ、跡形もなくその姿を消した。




「強度はまだまだ足りないねこれでは、単体級の強度もない感じになっている。まずは、この強度を上げていく練習を始めよう」




「はい、よろしくお願いします」




「強度を上げるために必要なことは二つ、一つは今の魔力の質を上げること、これは毎日、魔力を練ることで自然と上がってくる。


 そして、もう一つが一番即効性がある。それは、想像力を上げること、即効性があるといっても知識が大切になってくる。それは、盾の素材だ、レオン君がいままで見てきた中で一番固いものは何かな?」




「鉄の剣です」




「そうか、なら今度は盾を作るときに鉄で出来ていると想像して作ってごらん。魔法はそれに答えてくれる」




「やってみます」




 ぼくはそういって、今度はただ盾を想像するのではなく、鉄で出来ていると思いながら盾を作った。すると、先ほどと違い、金属の光沢を感じる盾が出現した。


 しかし、再びパレス先生が叩くと割れて簡単に消えてしまった。




「これも、練習あるのみ。さぁ続けていこう。でもその前に、そろそろ魔力が尽きちゃいそうだから、これを飲むと良い」




 パレス先生はそういってポーションをぼくに手渡した。ポーションというのは液体の中に魔力が混ざっている飲み物で飲むことで体内の魔力を補充することができる。味も数種類あって色で味がわかる。渡されたのはイチゴ味だった。


 そうして、ポーションを飲んだ後、再び盾を作る練習を始めた。




*数刻語




「次はどうかな?」




 そう言うと、再び杖で盾を叩くと、今度は割れて消えることはなく盾は形を留めていた。




「良い盾が出来上がったね。これなら単体級といっても良いだろう。


 後は、魔力の練度を上げることによって、より長く盾を維持できるようになるし、数を増やして多数の人の前に同様の盾を出せるようにもなる。


 そうなってくると単体級から分隊級へと進歩したと言えるし、そうするとまた新しいことをしなくちゃいけないけど、とりあえず、今日はこれでいいかな」




「ふう、疲れた」




 ぼくは、そういって地面に腰を下ろした。




「レオン君は、十分に才能があると思うよ。できない子は、一日中練習しても盾を作ることすらできなかったりするからね」




「そっ、それは良かったです」




「ほら、回復魔法だ」




 そう言うと、パレス先生はぼくに、疲労回復の魔法をかけてくれた。




「ありがとうございます」




「それじゃあ、ちゃんと、毎日魔力を練ることは忘れないのと、今日の感覚を忘れないために、今は一日一回は盾を出すと良い。


 今度来たときは、放出魔法を教えよう」




「よろしくお願いします」




 ぼくはそういって、パレス先生の家を後にした。















「おーい、レオー」




 ぼくが、道沿いを歩いていると、後ろから少年の声がしてきた。




「やぁ、マルコ、久しぶり」




 ぼくに声をかけてきたのは、領内で良くぼくが遊んでいる友達の一人で、ぼくと同い年のマルコである。ちなみにマルコの家は、お父さんが元探索ギルド所属の冒険者でお母さんがそこの元ギルド職員だったらしい。




「最近、なかなか遊びにこないから、エミリーとショーが会いたがってるぞ」




「ごめんよ、最近午前中は、なかなかマーシャの授業を抜け出せなくて」




「それなら、朗報があるぜ、今朝マーシャ先生宛てに連絡が来て、マーシャ先生明日からエンハンに行くことになったらしいぜ」




「本当か!、それなら、またしばらくは遊びに行けるな」




 マルク領から城砦都市エンハンまでは、道路を道なりに通ると四日はかかる。つまり、マルコの言っていることが本当なら、少なくとも十日は空くということだ。




「なら、明日はいつもの場所に行くよ。ぼく魔法を覚えたんだ見せてあげる」




「本当か?明日だからな約束な!」




 そうして、ぼくはマルコと別れ屋敷に帰って行った。

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