転生英雄伝 ~戦乱編~ 過去の英霊の魔法を使って最強の英雄となる

黒紙 創

第一章 ~誕生せし神の子~

第一話 ~愛しの我が子~

 作者からメッセージ


 転生英雄伝をお読みくださりありがとうございます。


 他の作品と比べると、戦闘シーンなどが起きるまで時間が掛かるゆったりとした成長物語です。戦闘シーンがお好きな方は現在13話前後あたりからしっかりお読みいただけると、もしかしたら良いかと思います。なので、それまでは流し読み程度に登場人物などを確認していただければ幸いです。


 それでは、転生英雄伝をよろしくお願いいたします。




★-----------★ 




 とある森に対峙しあうようにして向かい合う2つの存在があった。


 一つは体格的には180センチはありそうな長身で、頭に3対の角を生やし、和服のようなものを着ている。所要オーガの覚醒個体【オラクル・オーガ】別名を酒吞童子とも呼ばれる上位の魔物で、もう一方は見た目にも幼い様相で、身長は140センチほどの人の子である。明らかな体格差と戦力差がある。


 そして、幼い者の後ろには倒れ伏している影が3つほどあった。



「どうした? 逃げないのか幼き人間、貴様だけでも逃げればよいものを」


「ぼくは仲間を見捨てて逃げはしない」


「そうか、立派な心掛けだな。だが、残念でもある。その崇高な志は貴様の死によって無に帰すのだから」



 オラクル・オーガはそういうと、少年に向かい刀を振るった。




*    *    *



;「転生するなら貴族でお願いします。」




 それが、僕の目の前に居る女神さまにお願いしたことだ。




 僕が死んだのは、別に車に引かれたわけでも、誰かに殺されたわけでもなく、単純に病気で死んでしまった。


 高校に入学した頃に癌が見つかって、それからずっと、抗癌治療を受けてきたが、結局良くなることはなく、そのまま、2年間の闘病生活を終えて、あの世に行ってしまった。




 そんな僕が今いるのは、どこか中世ヨーロッパのような雰囲気を感じる宮殿のような場所だ。


 僕はなんとなく夢でも見ているかのように、無意識に宮殿を歩いている。


 そして、大きな扉の前にたどり着くと、その扉が音を立てて、開いた。


 その扉の先には、一人の女の人が王様が座るような立派な椅子に腰かけていた。




「よく帰ったね、いと遠き世界から」




 その女の人は、そういって続けた。




「私の名は、ジーラ。私たちの世界の住人からは霊魂の神と呼ばれているわ」




 霊魂? ていうことは、この人が僕をここに連れてきたのかな?




「えぇ、そのとおり」




「っ! 心の声が聞こえるのですか?」




「私は霊魂状態の人の考えがくらいなら、簡単にわかるわ。神様ですからね」




「僕はこれからどうなるのでしょうか神様?」




 地球の考え方なら、天国か地獄、それとも、輪廻転生的なことになるのかな?




「そのどれでもないわね、あなたにはこれから私たちの加護する世界に転移転生してもらいます。


あぁ、地球じゃないわ、あなたがこれから行く世界は、剣と魔法の世界ディエアド」




 剣と魔法の世界! ラノベみたいな話だ。




「えぇ、そんな感じでとらえてもらっていいわ」




「じゃあ、選べたりするんですか?転生先」




 僕が呼んでいたラノベでは、生まれ変わる先を選べたり、チートをもらえたりしていた。




「生まれ変わる先は、選ぶことができるけど、残念ながらチートは上げられない、私の加護くらいね、あげれれるのは、後は、あなたの努力次第。


 どうする、エルフや獣人、魔族にでもなれるわよ」




「人間でお願いします」




 僕は、地球で生きていた時せいぜい人として楽しめたのは、中学までで、全然人としての生に満足できていないのだ。




「あら、そう。ふふっ」




 目の前の女神はどこか嬉しそうにほほ笑んだ。なぜだろう?と思ったが返事は来なかった。




「そうね、人なら身分も選ばしてあげるけど、市民に貴族、王族でもいいわよ。なにがいい?」




 それなら、僕の答えは決まってる。




「転生するなら貴族でお願いします。できれば、そんなに偉過ぎず、でも、貧しくない感じで、あとできれば、継承権は低くお願いします」




「随分とこまかいのね」




 僕がファンタジー世界に生まれ変わるならみたいな、妄想をラノベを読んでした結果、一番人生を楽しめそうに思ったのが、今女神さまに頼んだ設定だ。だからできれば、この設定でお願いしたい。




「いいわよ、調度いい転生体があるから、そこにあなたを入れることにします。楽しんでいきなさい」




「はい!、ありがとうございます。」




 僕がそういうと意識が遠のいてきた。転生が始まったのだろう。もう、声を出すこともできないし、音も聞こえなくなり、最後に見た女神さまは、何かつぶやいているように見えた。










*         *          *










 神発暦




 それは、神がこの世界から離れ生き物たちを見守ることにした日とされている。




 そして、今暦3500年世界各地にある神と世界とをつなぐ神殿に、神託がおりた。








「これは!」








「どうされました?巫女様」








「我らの神より神託が降りました。近い未来この世界に戦乱と混沌の兆しがあるようです」








「そんな!やはり勇者として王国に召喚された彼らが原因ですか!?」








「まだ話は終わっていません。落ち着きなさい」








「も、申し訳ございません」








「例え王国が戦乱を開こうともこの世界には、数多くの英雄達がおります。それに、重要なのは戦乱よりも混沌の方でしょう。かつてこの予言がされた際には、この世界にいるすべての生命の危機が起こったとされています。」








「まさか!かつての大英雄達を持ってもそれほどの危機に?!」








「はい。ですが心配はいらないでしょう。この世界に混沌を退けるであろう者が誕生するそうです。」








「つまり、真の勇者様が誕生すると?」








「おそらく。それに、まがい物である彼らとは違い、神の子であることは確かでしょう。大いなる神による信託なのですから。我々はただ祈るのみです。この世界の安静と平和を」












*         *          *












 この世界には、時より神からの絶大な加護を受けて生まれる者たちがいる。




 その者たちの事を人々は神の子と呼び、そんな彼らが成長するとある者は、その大きな治癒の力で人々を救い聖女と呼ばれ、ある者は、その大きな魔道の力で人々を導き導師と呼ばれ、またある者は、王となり、騎士となる。




 時には、闇の神の子として破壊者となる者もいるが、多くの英雄たちによりその野望は今も阻まれ続けている。




 そして、そんな長き英雄たちが誕生した歴史において、神託により伝えられた世界の危機を救った者たちの事を人々は勇者と呼んだ。








 今回生まれる神の子は、英雄の卵は、果たしてどのような道を行き、成長するのだろうか?








 これは、再び起こる最終戦争で要となる9つの魂、その一つの物語。

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