【WEB版】異世界覚醒超絶クリエイトスキル (旧題:生産加工スキルが超有能だったので、裏から世界を牛耳ってみました)
たかた
第1話 学級裁判
「――では、今から多数決をとりたいと思う。彼を、
重苦しい空気が支配する中で、進行を務める少年の声が響いた。
元の世界でもクラス委員を務め、その上、運動部の強豪チームのキャプテンを務めていた彼の人望は厚い。
そんな彼から出された議題について、異議を唱える者は誰一人としていなかった。
「まずは賛成の人」
彼の声を合図に、周囲の人間の手が一斉に上がった。意志を示すように真っ直ぐ、または、申し訳なさそうにおずおずと。
腹の中にある思いは数あれど、結局は、今回の議題の中心である彼、つまり、今回の学級裁判の被告人である名上隆也という冴えない少年以外の、三十七人の手が暖かな木漏れ日の指す空へと、掲げられたのである。
「――じゃあ、反対の人」
挙手をする権利は隆也にも与えられていたが、彼はただ俯いて黙っていただけだった。
「名上……手、あげなくていいのか」
「いや、別に……どうせ、無駄だし」
長く伸ばした前髪の間から、委員長の少年、
「うわっ、なにあれキモッ……」
「ちょ、やめなって……」
「いや、でもアレはないでしょアレは……」
瞬間、彼の様子を観察していたであろうクラスメイトの女子グループから、かすかな嘲笑が起こった。
こんな状況に置かれても、毎朝のメイクを欠かさず見てくればかりを気にする、オツムの弱い、その場その場の感情だけで生きるバカ共。
今回ばかりは殴りかかってやろうかと隆也の拳が握られるが、学校へ行く以外は家にこもりっきりで、握力もさほどない彼のパンチなどたかが知れている。
仮に実行に移したところで、周りの、やはり女からの評価ばかりを気にする正義マン気取りの阿呆どもに集団で抑え込まれるのがオチだ。
「賛成が三十七、反対がゼロ――圧倒的多数だな」
そりゃあそうだろう、と隆也は口の中でつぶやく。
誰が言い出したのかは知らないが、この話が出た時点で、自分がどうなるのかなど火を見るより明らかだった。
友達はおろか、顔見知りすら誰一人としていない学生時代を過ごした隆也に、この窮地を救ってくれるような
「名上、すまない。だが、これがこのクラス皆の総意だ。わかってくれ」
言って、委員長である明人が、隆也の手に小さな金貨袋を握りこんできた。せめての餞別、ということだろうが、一週間ですっからかんになってしまうような金額を渡されたところで、何の意味もない。
ここが学校なら、まだいい。クラスから追い出されても、なんだかんだで隆也にはいくつかの逃げ場が用意されていた。それは職員室だったり、保健室だったり、または自分の家だったり。
だが、今、彼にその選択肢は存在していない。
だって、ここは、彼らが以前住んでいた世界とは、文化も言語も、そして生態系も、まったく次元の異なる世界だったのだから。
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