しかし残念ながら、そんな幸せは長くは続きませんでした。


 ええ、そうです。やってきてしまったのです……魔のイヤイヤ期が。


「はーい、ご主人様、ごはんたべましょうねー」

「やあ! いや! いや!」

「たべないんですか……?」

「たべる!」

「じゃあ、スプーンでごはんをすくって、たべましょうねー」

「いやあ!」


 スプーンを地面へと投げ捨てるご主人様。カラン、と音が鳴ります。


 ううう、事前に、子供にはイヤイヤ期という、何を言っても反発する時期があるとリンダさんから伺っていましたが……これは想像以上に心にきます。


 少し前までは、わたしの後ろにぴったりとついてきて、「まま! まま!」と可愛らしかったご主人様が、こんなにもわがままになるなんて……。


 しかし、めげてはいけません。


 イヤイヤ期は、言ってしまえばご主人様が自分の意思を持ちはじめた第一歩なのです。祝福すべきなのです。それに、イヤイヤ期には対処方法があるのです。


「ご主人様、じゃあこっちのごはんと、こっちのごはん、どっちからたべますかー?」

「こっち!」


 わたしが手渡したもう一つのスプーンを使って、ご主人様が右にあるごはんを口へと運びます。ふふふ、計画通り。イヤイヤ期を迎えた子供に対しては、強制すると反発するため、このように選択肢を与えることで、行動を促すのが良いのです!


 いやーそれにしても、いやいやと反発するご主人様も、これはこれで可愛らしいものですね。

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