不釣り合いな盗賊団

お届け物

1

雲一つない青空の下、草原の街道を歩く女性が一人。

その女性は、黒い髪を肩まで伸ばし、吸い込まれるような黒い瞳を持っていた。ローブを着こんでいるその風貌から、魔法使いと思われる。

「この辺りは、まだ整備されてる方なのね。」

そうつぶやく女性だが、その街道の整備は十分に行き届いていないようで所々石畳が壊れている。

しかし、街道側にナイフやら焚火の跡が所々にあるところを見ると、人の行き来はあるようだ。

そんな周囲の景色を楽しみながら、女性は石畳の上を歩いている。

「それにしても、回収もしなきゃならない対策品、これの回収も私の仕事になるのよね。」

ため息交じりに女性がつぶやく。

「レイナさん、そんなこと言ってると報酬の査定に響きますよ。」

どこからともなく声が聞こえる。声はレイナと呼ばれた女性の左手の人差し指に着けている指輪から聞こえてきた。

「この仕事、パパの依頼じゃなかったらやってないわよ。」

気にすることなく歩きながらその声に応えるレイナ。

「仕方ないですよ、ギルド指定依頼なんですから。」

「全く、いくらギルド創設メンバー特権だからってこんな依頼に巻き込まないでほしいわ。」

レイナはため息交じりに不服を漏らす。

「でも、報酬はちゃんともらうんですよね。」

「当り前よ、冒険するには先立つものがいくらあっても足りないんだから。」

「なら、しっかりやりましょうね。」

「はぁ・・・。」

丸め込まれた感のあるレイナ、どうやら指輪は通信機のような役割を果たすようだ。


街道をしばらく歩いていると、道しるべが立っていた。そこには、目的の村の名前とおおよその距離が書いてある。

道しるべによると、このまま歩いていても今日中には辿りつけそうにない。

「野宿はやだなぁ。」

日が傾く前にそのあたりの決断をするのだが、レイナはそんなことは気にしていない。

「じゃ、ちょっと急ごうかな。」

レイナは立ち止まって少し目を閉じて呟く。その呟きが終わると同時にレイナの手に杖が現れた。

「これも着けとかないとね。」

思い出したかのように、道具袋からゴーグルを取り出し、それを装着する。

「よいしょっと。」

杖にレイナがまたがると、その杖を起点に体が宙に浮いていき、5mほど浮かんだところで止まった。

「完全に飛んじゃうと村を見落としちゃうからね。」

「あれ?レイナさん、なんで魔法で飛べるのにわざわざ街道歩いてるんですか?」

また指輪から声が聞こえる。レイナは、その指輪に答えながら、ゆっくりと杖を前進させる。

「私、歩きながら景色を見て回るのが好きなのよ。それにしても、今日はギルドは暇なの?」

「私は特別な依頼のサポートですから。忙しかったら大変なことになってますよ。」

「それもそうね。じゃあ、ちょっと急ぐわ。」

レイナは、指輪との会話を切り上げて、杖を両手で持つ。そして、一気にスピードを上げた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る