演者主義

傘井

第0話 夏田という女性について

俺の名前は黒田明今年の春から高校生の16歳だ。 高校生になって思うことは部活選びにもっと慎重になるべきだということだろうか。今部室に向かってる自分の足がコンクリートに固められたような重さなのがそれを証明していると思う。この足の重さを解決するにはやはりあの女の部内独裁国家を終わらせるべきなのだろう。だが終わらせる方法が全く思いつかなかったので仕方なく西高高校3階奥元茶道部部室の扉を開けた。

「遅かったな黒田。役者を任せるとはいい度胸じゃないか」

「仕方ないだろう昨日夏田さんがいい脚本書くまで寝させないとか行って俺を監禁したせいで今も眠たくて仕方ないだよ」

「なんだよ寝坊かよはぁーーそんなんで映画業界に入れると思ってるのかい君」

「入ろうとなんて思ってないよ」

このどこから見ても態度がでかそうなのが俺が所属している映画研究部の部長であり映研の独裁者夏田正樹である。男みたいな名前だが正真正銘の女であるしかし性格は勝気で負けず嫌いそしてだらしないので女ぽっさ1ミリも感じられない。感じられるとしたらその他を圧倒する清楚な美人としか良いようがない容姿しかないだろう。

「なんだよ。その反抗的な態度は一緒に映画

界のてっぺんとるって約束したじゃないか」

「した覚えはないよ」

「何言ってんだここに一緒にてっぺん取りますよ血判状があるぞ」

「それ黒田さんが勝手に取ったんでしょうか。あれ吐くぐらい痛かったからね」

「私は吐いたけどなあの痛さ」

「知らないよ」

いつもこんな感じに彼女との対話は会話のドッチボール状態である。あー逃げたい帰って活字の世界に潜りたいそんな思いが俺の全身を駆け巡る。

「まあ黒田がそんな反抗的な態度を取ろうと、君黒田明という男は私のために脚本を書いて、映画を撮る義務がある」

「それはでもきみ 」

「君の秘密どうなってもいいのか」

彼女の心を抉るような妖艶なる音韻で紡がれた一言が俺の喋りを止めて、自分が今この夏田正樹という女のいいなりになるしかないない立場だということを思い出させた。


監督というポジションは本来役者をコントロールする役目であり映画撮影に置いて絶対的な権力を持つ。だがこの部活でその権力を持っているのは夏田正樹であり、僕は下僕でしかないのだ。僕はこの状態を『演者主義 』と読んでいる

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演者主義 傘井 @ogiuetika

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