( ˙-˙ )カナシミモブットバセ
ぺんぺん草
第1話((((;゚Д゚)))))))ハジマリ
夜の帳が降りた埠頭に腐臭の漂う怪物となった死者達が押し寄せる。奴らは生者の血肉を追い求め、港に上陸した人間を見つけては襲って殺していた。人間達は生きたまま体を食われ、無残な死骸と化し、もはや骨の欠片しか残っていない……。
『どうすりゃいいんだよ!』
既に仲間たちは食い殺されて全滅し、残るは俺だけとなってしまった。だが退路は断たれ、希望も残されてはいない。
港に放置されたコンテナの屋根の上が、身を隠せる唯一の場所となった。しかし息を殺して必死に隠れていても、すぐに食人鬼達に気づかれてしまう。8本の腐った指が屋根の上に現れ、略帽を被った警官が顔を出し、目があった。彼はもはや顔面の皮膚を失っており、爛々と輝く眼球だけが印象的だった。口元は血に塗れていたので、どうやら俺の仲間を食った化物の一体らしい。その姿はまさにゾンビだった。
「み……みつけたぁ」
奴が腕を伸ばすと、俺のジーンズの裾を掴む。俺はここで最期を迎えるのか。
「くそっ!くそっ!掴むな」
伸びてくる腕を蹴り飛ばし、必死に抵抗した。だが最初から助かる見込みなどありゃしない。蹴っても蹴っても、コンテナの上に伸びてくる腕の数は増えていく。膨大な数のゾンビ達を前に抵抗など無駄なのだ。ついに足首を掴まれ、死人達の群れに引きずり落とされそうになったその時。
この地獄に救世主が舞い降りる。少女の姿をした救世主が突然に……。
呆気に取られる俺を尻目に、彼女は敢然と死人達に立ち向かう。目にも止まらぬ速さの蹴りで奴らの躯(からだ)を砕き、引き裂く。その姿は鬼神のようだった。
「生きてる人がいるわ……。貴方は一体どこからきたの?」
振り返って問いかけた彼女の正体はまだ分からない。天使にも見えたし、ゾンビを喰らう悪魔にも見える。
だけど俺の唯一の味方だった。
「ちょっと下がってて」
そう言い残すと彼女は、地上に降りて食人鬼達の群れに飛び込む。それからは血で血を洗う凄絶な戦闘がはじまった。両者の戦いは……地獄そのものだった。
「コッチに……オイデェェ!オイデェェ!」
両目の飛び出していたゾンビが勢いよく彼女に飛びかかる。だがすぐさま彼女は奴の顔を片手で掴み、その勢いを止めてしまった。そして彼女が手に力を入れただけで、死人の顔はグシャリと割れて脳髄と目玉が飛び出した。まるで握り潰されたリンゴのように……。
「アンタと遊んでる暇はないの……」
「ウゴィェェッ!ブエエッ!」
彼女は手刀を振るうだけで、頭部を失ったそのゾンビの胴体から四肢をぶった斬ってしてしまった。それでも動き続ける死人の肉片を、靴で踏みつけて容赦なく潰してしまった。
「な……なんだよ、これ……」
情けないけれども、彼女の戦いを震えながら見守ることしか俺にはできない。
「でも、ちょっと数が多いかな……」
長い髪をかきあげ、凶悪な死人達を睨みつけて威圧する彼女。死人達の血を浴び、赤く染まったたその姿に、恐怖すら感じてしまう。だが彼女こそ、この狂った世界で俺のたった1人の味方だったのだ……。
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