ヘイワノカミサマ

あすま

何も無い普通の日常

神野カミノ マモルは普通の高校生だ。

容姿端麗とは言えないが、ブサイクでも無い。

背丈は普通で髪は真っ黒。

他人ひとと話すのが少し苦手で、友達は多くは無い。

俗に言う陰キャというやつだ。


「護ってさぁ、好きな人とか居んの?」と、下校途中の電車の中で晴輝ハルキに言われた。

晴輝は護と小学校からの仲で、護の数少ない友達の一人だ。

イケメンで運動も勉強も出来る。

天は二物を与えずとは言うものの、彼には明らかに与えられている。

「…え? いや、居ないけど……」と護は答えた。

「なんだよ、つまんねーな。 ま、出来たら教えろよ!」

「お、おう……」

――間もなく、××、××――

護の最寄り駅を知らせる声が、車内に響く。

「じゃあ、また明日」

「おう! じゃあな!」


「……好きな人、か……」護は自宅まで歩きながら、晴輝に言われたことを思い返した。

護は好きな人など出来たことがない。

そんな護は今日、生まれて初めて「好きな人」という未知の存在について考えた。

「まぁ、そのときになったら考えよう。」


――ガシャッ――

「ただいまー」護が自宅に帰ったとき、そこには誰も居なかった。

「留守か…」と、護は自分の部屋に行くと机の上に一通の手紙が置いてあった。

「お母さん達は今、お父さんの実家に来ています。今日のご飯は、家にあるもので適当に済ましてください。」

料理の出来ない護は、インスタントラーメンを作ろうとお湯を沸かした。

容器に熱湯を注ぎ、三分待つ。

料理の出来ない護にも、そのくらいは出来る。

完成を待つ三分の間、SNSを見た。

友達の少ない護は、こうやって最近の情報を入手している。

――ピピピピッ!――

三分間計っていたタイマーが鳴る。

タイマーを止めて容器の蓋を開ける。

塩味のラーメンをすする。

美味い。

さっさとラーメンを食べ終えて、することも無いので歯を磨く。

「明日は休みだから、宿題は明日にして今日は寝よう。」

部屋のベッドに横になり、明かりを消す。

明日目が覚めたら奇妙なことが起こるなど、このときの護は夢にも思っていなかった。

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