第3話 新学期 

この日は新学期の初日という事で授業もなく、始業式と簡単なホームルームを経てすぐに解散される運びとなった。

ホームルームが終わると新しいクラスということもあり、新しいクラスメイトを放課後の遊びに誘うもの、部活動に向かうもの等活気立っている。


「ゆっこ!駅前にクレープ屋できたらしいよ!」


「は?まじ?それはアガるくね?行くしかないっしょ」


「あ、でも今日定休日だ~」


「え、それは下げよりの下げじゃん?まじ萎えなんですけどお」


相変わらず上げ下げが激しい人らしい。日経株価みたいな情緒の不安定さだな。

とそんな益体もない事を考える。

まあ、癖はあるけど今年も平和なクラスメイトに囲まれてなんだかんだ平穏な学校生活を送ることが出来そうだな。


―――んじゃ、そろそろ俺も帰るとするか。


今日は用事もあるしな。

鞄に荷物を詰め込むと俺は活気だった教室を後にした。

俺は部活に入っていなければ生徒会などの放課後拘束されるようなクラブ活動にも在籍していない。

有り体に言えば帰宅部ってやつだな。


この高校は自由な校風も相まって進学校にしては意外と部活動が盛んな学校だ。

野球部は去年甲子園予選の決勝まで勝ち上がっていたらしいし、光の所属するバスケ部は県内ではここの所負けなし。

ちなみに光は一年の時からそんなバスケ部のエースで去年のインターハイ出場には一役買っていたらしい。


ほんとに普段の言動からはそんな姿想像もできないけどな…

朝なんて校則の話をしてたらあの後


「俺の小柚子への思いは恋とか愛なんて次元はとうに超越しているんだ!もはや校則に縛られるようなスケールの話じゃないのさ!!」

なんてイケメンが良い笑顔でぬかしやがるんだぜ?

気持ち悪いだろ?


こいつのビョーキはもう治らん。

改めてそう確信させられたよ。

俺にも妹はいるが妹に恋するなんてどんな人生を送ったらこんなビョーキになるのか。

常人の俺には理解の及ばない世界だ…

そうして俺は席を立つと、噂の光が相変わらず人のよさそうなイケメンスマイルで声をかけてきた。


「陽太~帰ろうぜ~」


「今日は部活ないのか?」


「昨日までずっと練習試合続きだったからな。今日は小柚子ちゃんデイだ」


「そっか、でも悪いな。今日は俺も妹デイだ」


すると光はニタァと意地の悪そうな笑みを浮かべると


「人の事言えねえなあこのシスコンさんめえ」


「てめえにだけは言われたくねえよ馬鹿」


そんないつものような他愛もないやり取りをした後俺は鞄を肩にかけ学校を後にした。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る