過ぎた未来に過去を見る

手をひかれた。

淡い日のうすくくもった視界に、この手より大きな手。見えたと思ったらすぐに僕は体の重心を見失った。

温もりを感じるその手に、これまで何度も救われて。

思えばずっと、その手があったからここまで生きてこれたのだと今なら分かるようだ。

母の温もりはきっと、心の奥底に植え付けられた種みたいなもの。生まれる前に植え付けられた。

僕が大きくなれば、種はかえって綺麗な花を咲かすんだ。


どこまで咲いていくの?

花はもう満開なのに。


花びらひとつ落ちた瞬間に母がもういないことに気付いたとして、

僕はただ今までの恩を返すようにそっと、花びらをひろった。

残っていたのは花びらひとつ、花はずっと前に枯れていた。

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