天馬の救い
「ルーメン!」
私は咄嗟にサラさんを私の背中に隠す。
どうして、ルーメンがここに!?
まるで、私がここに来るのが分かっていたかのように……。
「エレナ、待ってたよ。迎えに来たんだ」
「! ……まさか、ルーメン達の仕業なの? 偽物のテネブリス軍が各国を襲ったのは……!」
「うん、そうだね」
あっさりと肯定するルーメンに私は開いた口が塞がらない。
「どうして……どうして、そんなことを!」
「──相変わらず真っ直ぐな人間なのですね、貴女は」
するとルーメンの隣にいつの間にかマモンさんまで現れる。
サラさんがマモンさんを指をさし、「アスモデウスを攫った奴!」と怒りを露わにした。
「マモン、さん……!」
「お久しぶりでございますエレナ様」
「ど、どうして貴方までここに!!」
「どうしてもないですよ。あの夜、ルーメン様をこちらに
あの夜。
私はそれがルーメンが地下牢に閉じ込められた夜のことを指していることにすぐ気がついた。
「私は一目見たときから気づいていました。ルーメン様が、私達と同種なのだと。しかしあろうことか、魔王様とエレナ様はルーメン様を家族として扱うことを選んだ。仕方なく私はタイミングを窺うことにしました。どうしてもエレナ様や魔王様に愛されながら成長していくルーメン様を城の中で孤立させ、絶望させる必要があったのです」
「……もしかして、だからルーメンがオリアス達を食べたなんて嘘を言ったってこと? それが一番城の皆の恐怖を煽るから?」
「まぁ、そうですね。しかしそれはあまり意味がなかったようです。彼は別に、私達の話を持ち掛けたときに抵抗すらしませんでしたから」
「…………、」
ルーメンは何も言わなかった。
聞きたいことは山ほどある。
しかし、私はまず一番に思いついた質問は──。
「マモンさん。──あなた達は、何者なの?」
「悪魔ですよ」
「悪魔はルシファーただ一人でしょう? そしてそのルシファーは、冥界で拘束されているって!」
「ふふ、いつの話をしているのですか? 勉強不足ですよ」
マモンさんの言葉に唇を噛みしめる。
つまり、ルシファーの封印は解かれているっていうこと?
ああもう、わけわかんない!
「──エレナ、単刀直入に言おう。僕の所においで。ノームなんかじゃない。僕が君を幸せにする」
「ルーメン、貴方がそこにいる限り、私は幸せにはなれないよ」
するとルーメンは眉を下げ、微笑した。
「エレナなら、そう言うと思った」
「……いかがしますか、ルーメン様」
「強引にも連れて行くよ。今の僕の敵はノームだけじゃない、サラマンダーもいるからね」
「ははは、恋敵が多いと大変ですねぇ」
私は警戒態勢を取りながら、思考を巡らす。
どうしたものか。
せめてサラさんだけでも助かれば……。
そう思い、シャドーさんにサラさんだけでも連れて逃げてとお願いしようとした時だった。
──頭上から、
「!? え、」
「な、なんだあれ!」
空を駆ける白馬。ウィンディーネ女王の愛馬かと思ったが違った。
あの馬には──翼がある!!
正真正銘、
瞬間、シャドーさんが私とサラさんを抱え、ペガサスに乗り込む。
ペガサスはそれを確認すると、素速く上空へと駆けた。
よ、よくわからないけれどこのペガサスさん、私達を助けに来てくれた……んだよね?
シャドーさん曰く「悪意は感じられない」とのことなので、このままどこかへ連れて行ってもらうことにした。
私はペガサスさんの背中で体勢を整えると、ルーメンを見下ろす。
すでに距離があり、ルーメンの表情までは分からなかったけれど。
──絶対、貴方の目を覚まさせてあげるから。
心の中で、そう言葉を残した。
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