笛泣く
深瀬空乃
となり
確かに恋をしていた。
気が狂いそうな激情も、身を焦がすような嫉妬も、今日の今日まで知らなかったくせに、今は痛いほどその存在を主張していた。
きみは、ただのともだちだと思っていた。
ぬるま湯の中でぬくぬくと過ごすように、ただきみの声を聞いて、みんなと笑っているそれだけでよかった。それでいいと、それがあたりまえなのだと思っていた。
きみのLINEのステータスメッセージが、幸せそうな報告に変わったときも、「ああ、恋人ができたんだ」だなんて呑気にスマホを見ていた。それくらいだった。
わたしが泣いてしまいそうなほど、君のとなりが欲しいと思ったそのとき、もうその場所はしっかりと埋められていた。私の入る隙間なんてないくらい。
ただ、私は気付けなかったのだろう。もう手に入らないと分かるそのときまで、柔らかな胸の鼓動のそのおとに。
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